黄金色に酔う 【我妻善逸】

三十八. side善逸 ページ16

...



「苦いぃ！苦すぎんなんだよこれェ！」


1日に何回も流し込まないといけない苦い薬に悲鳴

そして現在俺はどこにいるかというと蝶屋敷


Aちゃんの店をあとにした昨晩、俺は強い鬼と戦わされ骨が折れてしまいしばらく休養が必要だとさ、あんまりだよ


「はぁぁ、Aちゃん」

正直なところ明後日は行けそうにない
次会う時どんな顔したらいいだろう、俺から言ったことなのに




「なぁ、善逸」


隣のベッドで声がしてそちらに身体を向ける
俺の同期の炭治郎だ
炭治郎もまた違う任務だが怪我を数日前に負ってしまい俺と同室にいる


「気がつくとそのAという人を呼んでいるようだが一体誰なんだ？」


「俺の天使。いや天女？女神か？そんな女の子」


「...それは妄想か？」


「ちっげーよ！！失礼な奴だなお前！！てかなんだよその顔は！！やめろよ！心外だぞ炭治郎！！！！」


「あはは...ごめん」


苦笑して謝るが、炭治郎にとって俺はどういうふうに写ってるんだよ


あぁー...俺のために着飾ってくるAちゃん見たかったな〜、どんなに可愛いだろう、どんなに美しいだろう、目に焼き付けておきたかった


次会う時はどうしたらいいかな、
でもきっとAちゃんは許してくれる。優しいから
でも心の奥底ではとんでもなく怒ってるかもしれない
約束を果たせない野郎だと



「何か深く悩んでいるのか？」


心配そうに眉を下げて俺の目を緋色が捉える
数秒間その緋色に捕らわれて、見つめた


匂いで分かってしまって、と炭治郎
そうだな、お前鼻良いもんな


俺は炭治郎に打ち明けた、Aちゃんとのことも。炭治郎はしっかりと頷きながら俺の方を見ながらしっかりと聞いてくれた


「...なるほど。そうか、」

天井をじっと見て数秒、何かを考える
そしてすぐ俺の方に向き直る


「でも問題ないと思う！」


いやなんだったんだよあの数秒

え？と思わず俺が聞くと


「きっとAさんは話せば分かってくれるよ。善逸の事をちゃんと受け止めてくれる。そんな気がするんだ。それに、」

「善逸の口から思わず名前が何度も零れてしまうような愛おしい人なんだろ？」



だから大丈夫だよ、と安心させるような声、顔で言ってベッドから飛び降りて機能回復訓練へ去っていった




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