罰ゲーム2 (ページ17)

今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:10,762 hit

3 ページ17

『ありがと、俺も好きやで』

『そんな意味じゃない！俺はちゃんと丸ちゃんのこと『たちょ、それは違うよ』

丸ちゃんは優しい表情のまま冷たく否定をする。
俺の身体を突き放すこともせぇへん。
むしろ諭すように、洗脳するような言い方やった。

『たちょのそれは“勘違い”と“思い込み”や』

『そんなわけ！『大倉は俺のこと“好き”じゃないよ』

“大倉”と真剣に呼ばれたら、何も言い返せへんかった。
丸ちゃんはそのまま俺の顔を覗き込むように身体を離す。

『たしかに、俺は亮ちゃんのことまだ好きやで。けど、同じことを繰り返したりはせんよ』

『な、んで『それはちゃんと全部終わったら言うよ』

その表情には悲しみと苦しさしかなくて、でも笑顔の丸ちゃんで。

『大倉は早く章ちゃんと仲直りしてな』

『またヤス……』

『大倉、考えてみて？今自分はめっちゃしんどくて、苦しいねん』

『……おん』

『その時、誰が一番最初に頭に浮かぶ？』

丸ちゃんの言われた通りの想像をした。
その時、最初に頭に浮かんだ人は頼れるお兄ちゃんでも、厳しく優しいオカンでも、大好きな笑顔の素敵な人でもなかった。

いつだって隣に居てくれた、小さい奴やった。

『大倉の本音はそこやねんで』

全部お見通しかのように丸ちゃんは言うから、俺は思わず丸ちゃんの胸倉をつかむ。

『……ばかにしてんの？』

『まさか。大倉のこと好きやから、変に拗れて欲しくないねん』

『………絶対に俺の好きを“恋愛”やとは認めてくれへんの？』

『おん。というか、絶対に違うから』

『……なんで、なん？何で、そんな酷いこと言うん………』

丸ちゃんは俺の手を付かんでゆっくりと降ろす。
そのまま額にキスをしてくれた。

『これで顔が真っ赤になってたら信じたわ』

俺は涙がこぼれた。
丸ちゃんの優しい抱擁に安心感が買ってしまう自分がやっぱりしんどくて、俺はその肩で涙をこぼし続けた。

『ごめんな、変に心配かけて』

丸ちゃんの優しい手が俺の頭をなでる。

『でも、大丈夫やから。何もかも元通りになるし、良くなるよ』

丸ちゃんはそう言い残して、俺の家から出て行った。
俺は一人で居たら寂しさと苦しさと悲しさで潰される気がして、思わず携帯を手に取った。

何となく掛けたのは、甘やかしすぎない人だった。