罰ゲーム (ページ8)

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黄side ページ8

「……久しぶりやな」

なんとなく言える言葉はそれしかなかった。
丸もいつもの笑顔で「そうやね」と返してくれた。
そのまま一緒にサンプルケースを覗き込む。

いや、なんでやねん。

とは本人には言えんかった。
久しぶりに隣にいる感覚が懐かしくて、暖かくて、離れ難いのは俺も同じやったから。

「亮ちゃんはカメラ回してるけど、仕事？」

「え、あ……」

動揺のあまりカメラの存在を忘れてて、動画を回しっぱなしやった。
俺はすぐに停止ボタンを押す。

「あれ？止めちゃって良かったん？」

「あの、止めるタイミング間違えてて………」

丸は俺の苦し紛れの言い訳に苦笑いした。

「俺のせいやんな」

「ち、ちゃうよ！」

即否定したけど、違うことなんかなかった。
丸は事務所の人間やから、動画に映ったらあかん。
それに、色々と問題もあるし……｡

「俺、すぐ買ったら帰るし、ごめんね……」

そう言って丸はお店の中に入ろうとするから、俺はその腕を掴んで動きを止める。

「亮ちゃん？」

「あ、の………普通に、自分用に買い物に来てて………」

「あれ、そうやったん？」

丸は少しホッとしたような表情をした。
俺もその表情にホッとした。

「……丸は？」

「俺は、おつかい」

「自分用に？」

「まぁ、半分そうかな」

俺と丸はまたサンプルケースを覗き込む。

「半分だけなん？」

「大倉からのお願いやねん」

「大倉らしいなぁ」

久しぶりの会話にソワソワしてたけど、メンバーの話をすると昔のような雰囲気に変わる。

「裕ちんと信ちゃんは決まってんねんけど、章ちゃんが決まらんくて」

「章ちゃんやったら、この辺が好きそうじゃない？」

「あぁ、確かに」

「あと、横山くんはこっちの方が好きそうやで」

「じゃあどっちも買おかなぁ」

聞いてるだけじゃ、本当にただのメンバーの会話だ。
だけど、本当は俺らはメンバーでもない。
もう、同じ枠組みには居ない。

それでも、俺らは一緒に居た。
何を買うか悩んだり、誰に何を買ったら良いか決めたり、昔のように盛り上がった。

それが、やっぱり心地よかった。