黄side ページ11
「亮ちゃん、撮影出来なかったの?」
「ちょ、ちょっとバッテリーが……」
丸に出会ってしまった挙句、丸に奢ってもらうなんてことをカメラにおさえられるわけなくて。
今回撮った動画自体をお藏にするしかなくなった。
「まぁ、亮ちゃんが急に泣いちゃったりとかもあったし、これで良かったのかもね」
「ゔっ………ごめん……………」
「別に大丈夫だよ。とりあえず、今日はもうゆっくり休んでね」
「……ありがと」
仁に嘘をついてしまった事への罪悪感と仁の優しさに泣きそうになる。
俺はそんな気持ちすら飲み込みたくて丸に買ってもらったサンドイッチを口にする。
『当たり前やん』
頭に浮かぶさっきの丸の笑顔。
隣に居た時の変わらない匂い。
男らしくて大きい掌。
少しだけ痩せていた姿。
大人っぽくパーマのかかった髪型。
俺の中にはもう丸で埋め尽くされていた。
今日はもう朝からそうや。
あの日の夢を見た瞬間から、全部が丸やった。
何をするのも丸が出てきた。
「………会ってもうたら、終わりやん」
幸せな気持ちとは裏腹な言葉が出てくる。
せっかく買ってもらった美味しいサンドイッチの味なんか涙のせいでほとんどわからんかった。
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作者名:ひなまる | 作成日時:2022年6月27日 17時