緑side ページ40
俺は間違ってない。
ちゃんと、俺らのことを考えての判断や。
俺は、絶対に間違ってない。
間違ってなんか、ないよな………？
胸が苦しくて、息が詰まってるような感覚。
目の前がボヤボヤしてきて、意識が遠くなる。
「大倉！！ちゃんと息吸え！！！！」
横山くんの声に俺は我に返って、知らない間に吸っていなかった息を全部吸った。
吸いすぎて噎せてしまって、そんな俺の背中を丸ちゃんがさすってくれる。
「はぁ………はぁ……………」
「大倉、大丈夫か！？今、ちゃんと意識あるか？」
「よこ……やまく………」
「なんや！？」
「………声でかいわ」
横山くんは優しく俺の頭を叩いて「心配してるんやろうが！」と怒った。
俺はそんな横山くんを見て思わず吹き出してしまった。
「たちょ、ちょっと横になり」
「あぁ……ありがと、丸ちゃん………」
丸ちゃんはスっと立ち上がり、俺をソファに寝かしてくれた。
横山くんは楽屋に置いてあった水を渡してくれて、俺はそれを受け取ってゆっくりと飲む。
「…………どないしたん？急に過呼吸みたいになって、呼んでも全然反応なかったし………」
「ごめんごめん……ちょっと、色々考えすぎたみたいやわ…………」
丸ちゃんは頑張って笑う俺に対して泣きそうな顔をする。
横山くんは「無理したらあかんで」と一言だけくれて、それ以上は何も聞いてこんかった。
聞いてこない優しさに、涙が出そうやった。
その後、戻ってきたヤスと信ちゃんにめっちゃ心配されて俺は大事をとって次の撮影を休むことにした。
と言っても、俺が必要のないコーナーを先撮りするスケジュールに変更された。
ひとりぼっちの楽屋で、俺は亮ちゃんのことを思い出す。
明らかに丸ちゃんの服を着て腰を痛そうにしてる姿は、男同士の経験のない俺でも察せるものやった。
付き合ってないのに、なんで、そんなことすんの？
亮ちゃんから仕掛けるような人じゃないのも、わかってる。
なんだかんだ真面目で、シャイな人やから。
だから、全部わかってる。
丸ちゃんが仕掛けてることやって。
丸ちゃんはやっぱり今でも亮ちゃんが好きなんやろう。
亮ちゃんのあの様子から見て、亮ちゃんもきっと……。
なら、なんで付き合わへんの？
なんで、自分の首絞めてんの？
結局、丸ちゃんは亮ちゃんのことだけを考えて判断してるんやろ？
傷つくくらいなら、会わんかったらええのに。
「やっぱり俺は、間違ってなんかない……」
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作者名：ひなまる | 作成日時：2022年6月27日 17時
