罰ゲーム (ページ19)

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黄side ページ19

「久しぶりやね、亮ちゃんの家来るの」

「そう……やな………」

丸が久しぶりにオフやったらしく、俺が連絡したら二つ返事で家に来てくれた。
と言っても、朝からとかじゃなくて夕方からやけど。
何となく連絡して俺の家で宅飲みすることになった。

「最近何してたん？」

「俺？俺は……まぁ、普通に楽曲作成とか……YouTubeの撮影とか、まぁその他色々やで？」

「亮ちゃんの新しい曲また聞けんの！？めっちゃ嬉しいわぁ」

丸がニコニコしながらそう言って俺の曲について話し出す。
嬉しいはずやねんけど、ちょっとだけ胸が痛い。
もう一緒に歌えへん俺らやから、曲について話すのは何となく違和感がある。

「亮ちゃんが作ってくれた歌が好きって言ってくれる子多いねんで？この前もeighterの子からの質問答えた企画でな」

知ってるで、俺もそれ見てんから。
『彼はベース好きなんやと思う』って言ってたな。
当たってるけど、半分違うねんから。

俺は、ベースを弾く丸が好きやってんから。

「亮ちゃん？」

「………えっ」

「めっちゃボーッとしてたけど、大丈夫？」

「だ、大丈夫やし！ってか、お前は何してたん？」

咄嗟に出た言葉はいつだって生意気なもの。
もっと可愛く話せたら良いのに。
今更かもしれんけど、今やからこそ、そう思う。

「俺はバンドの練習やで」

「あ、そう……やんな…………」

ライブが決まってたら、だいたいこの時期からはずっとスタジオに入って練習してた。
わかってて聞いてしまったみたいで、俺は罪悪感を抱いた。
けど、丸はニコニコしながら「大倉と2人でさっきも練習しててん」と話してくれた。

「大倉も久しぶりの練習やったらしくて、ちょっとお互いボロボロやったけど楽しく練習できてんで！ベースも少し上手くなかったから、また亮ちゃんに聞いて欲しいわ」

「…………おん」

聞けるで、なんて言えへんかった。
だって俺自身も後悔してるから。
まさか、まさかやと思ってるから。

見に行きたいと思って応募したライブは、当選していた。

その事を伝えることなんて無理やった。
この今の関係性をまだ壊したくない。
丸とのやっとできた時間を、失くしたくないから。

「そう言えば、亮ちゃんのあの歌好きやったよ」

「な、なんの歌？」

「“罰ゲーム”」

丸の含みのある瞳に俺は言葉を出せんかった。
やっと出た言葉は「ありがとう」やった。
丸は相変わらずニコニコしてる。
俺は焦りを消すように出してた酒を一気に飲んだ。