罰ゲーム (ページ17)

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橙side ページ17

「なぁ、丸ちゃん」

「ん？どーした？」

大倉とライブに向けて一緒にスタジオに入っていた時だった。
急に音が止まったと思ったら、なんとも言えない顔をして俺を見ていた。

「丸ちゃんは、今幸せ？」

「急にどうしたん？まぁ……幸せやで、めっちゃ」

俺の返事に大倉は「そっか」とだけ返してきた。

「おいおい！聞いといて反応薄いな！笑」

「………おん」

「………たちょ、どうしたん？また何かしんどいんか？」

大倉は頑張りすぎるから、背負いすぎるから、こうして気になったら直ぐに声をかけるようにしてる。
誰も大倉が休むことも立ち止まることも責めたりせんから。
だから、こういう時はゆっくりと話をするようにしてる。

「いや、体調は大丈夫よ。無理はしないし、そこは安心して欲しい」

「そう？ならホンマに急にどーしたん？丸ちゃんのこと気にしてくれてるの？♡」

「そういうのええから」

「酷いわっ！」

大倉はやっと笑ってくれて、俺もそれだけで嬉しくなって変なスイッチが入る。
このままいつも通り変な絡みが始まると思ってんけど、大倉は真剣な顔つきで俺を見つめる。

「不安になったり、緊張したり、どうしようもない時、お前なら誰を頼る？」

「誰をって……メンバーの中でってこと？」

「うん」

「…………誰やろうなぁ」

即答出来んかった。
頭に浮かんだのは、もうここには居ない人だったから。
他のメンバーを頼りにしてないわけじゃない。
ただ、ライブ前のルーティンにもなってたから。
いつだって無言でそばに居てくれたから。
それが当たり前やったから。

そんな俺らを見て、ちょっとだけ悔しそうにしてた亮ちゃんの姿も今は見れないけど。

「俺は、みんなそれぞれに話聞くかなぁ。裕ちんと信ちゃんはきっとお兄ちゃんみたいに返してくれるやろうし、章ちゃんはきっと素直に受け止めて素直な意見をくれる。大倉は色んな面からのアドバイスをくれると思う。………だから、メンバー全員やな！」

大倉は俺の答えを分かっていたかのように小さく笑った。
それは嬉しいとか照れとか、そんなんじゃない。
どちらかと言えば悲しそうに見えた。

「丸ちゃん」

「ん？」

「お願いやから、今度は無理せんでな」

「…………何の話？」

「ほら、練習やんで」

「えぇ！？無視！！？？」

大倉が本当に何を言いたかったのか、全然わからへん。
でも、それ聞いても大倉は何も言わんのやと思う。

俺は無言でベースを手に取って練習を再開させた。