泡沫。 (ページ8)

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「あ、そうだ俺、三年の平野紫耀。きみは？」

「一年の瀬野Aです。」

「…やっぱ新入生か！そりゃ知らないよね。笑」

平野先輩はとてもフレンドリーで、会話が途切れることがなかった。そして、いかにも陽キャなんだろうなと思わせるような人だった。

他に誰もいない、先輩と私のふたりだけの空間。なのになぜか緊張せずに話せている。私にしては信じられなかった。

「Aちゃんってさ、」

「え、」

そして、とても簡単になんの不自然さもなく名前呼びをできちゃうような人だった。周りの人からすれば普通なのかもしれないが、こんなにも簡単に名前呼びをされるだなんて驚いた。

「あれ、Aちゃんじゃなかったっけ？」

「あ、あってます！」

「よかった。笑俺人の名前覚えんの苦手なんだよねー。」

「そうなんですね。」

「三年になるのにいまだにクラスの人半分も名前わかんないし。笑」

「え、それはある意味すごいです。笑」

「でしょー？俺すごいんだよ？」

「自慢するとこじゃないですよ。笑」

「ごもっともです、笑」

平野先輩と話すのはとても楽しかった。永瀬くんと話す時とは違う、また別の楽しさがあった。

どっちがいいとかはないけれど、初対面でこんなに楽しく話せる人に出会ったのは初めてで、自分でも驚いていた。

「そろそろ昼休み終わるけど大丈夫？」

「あ、ほんとだ。戻らないとですね。」

「いーや、俺は戻んないよー。」

「え？」

「今日はサボるって決めてるから！」

「よくないですよ？」

「だいじょぶだいじょぶ！もう先生たちも慣れてるから注意すらされないね。笑」

ドヤッとしながらそういう先輩に、何を言っても無駄だと思った。それに先生たちが何も言わないってことは何か事情でもあるのかな、なんて思ったからこれ以上言わないことにした。

先輩は屋上を出る間際にあ、そうだ、といいスマホを取り出した。

「連絡先交換しよ！」

「え、」

「だってまたAちゃんと話したいんだもん。ね？いいでしょ？」

あまりにも目がキラキラとしていて、あんな目をされたら断る人なんていないだろうと思った。いや、そもそも断る理由もないけれど。

高校に入って初めて交換した連絡先。永瀬くんともまだ交換できていなかったのに。

平野先輩のコミュ力の高さには驚かされるばかりだった。