泡沫。 (ページ35)

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そして迎えたテスト当日。もうすっかり先輩たちと過ごすのが当たり前になってしまって、周りの人の目が気にならなくなった。それに、周りも興味がなくなったんだと思う。

「お互い頑張ろーね！」

「はい！」

「ほら紫耀早くしないと遅れる！」

「え、まじ？じゃ、また後で！」

先輩たちと話せてうきうきした気分でいたのも束の間。すぐに私に冷たい声と視線が注がれる。

「なに浮かれてんねん。」

「え、なが、せくん、」

永瀬くんだった。そうだ、今日はテストだ。サボるなんてことはできない。私を見る永瀬くんの目は、今まで見てきたどの永瀬くんの目よりも冷たい目をしていた。

「俺がいない間にあいつと仲良くなったんやな。てかこの前のいろいろも全部あいつやろ。」

「っ、」

「ほら、否定せん。言っとくけど、あいつお前が思ってるほどええやつじゃないからな？」

………なにそれ。

気づいた時には自分でも驚くぐらい低い声でそう出ていた。この前とは比にならないくらい。それくらい、腹が立った。

元はと言えば永瀬くんが悪いのに一方的にキレられて、しかも先輩のことを悪く言われて。腹が立たないはずがなかった。いや、どちらかと言えば先輩のことを悪く言われたことにすごく腹が立ったんだろう。それくらい私の中で先輩の存在が特別に変わっていっていた。

「少なくともそうやって人のこと悪く言うような永瀬くんとは比べものにならないくらいいい人だよ、先輩は。」

「っ、………。」

私がそう言うと、永瀬くんは黙り込み、自分の席に着いた。ああ、もうきっと今まで通りには戻れないんだろうな。

先輩が永瀬くんは私が思ってる以上に私のこと大切に思ってるって言ってたけど、そんなことないよ、きっと。大切に思ってたら、私が大切に思ってる人のこと悪く言わない。胸が痛くなるばかりだった。