泡沫。 (ページ29)

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「え、？」

「紫耀は………いや、紫耀も、が正しいのかな。心に深い傷を負ってる。きっと、俺が思っている以上に深い傷なんだと思う。その傷をAちゃんなら埋めることができるのかもって思ったんだよね。」

神宮寺先輩の言っている意味がわからなかった。“紫耀も”って神宮寺先輩は言った。それは何の“も”なのだろか。“も”ってことはもうひとり含まれるよね、？それはやっぱり永瀬くん、？

それに、私なら先輩の傷を埋めることができるのかもしれないってどういうこと………？

「どういうことですか、」

「ここまで言っといてなんだけど、それは俺からは言っちゃだめだと思う。けど、俺、紫耀が久しぶりに女の子と関わってるのみてさ。しかもあんな紫耀の様子見ちゃったらさ、Aちゃんなら、って思ったんだよね。」

「………。」

「………Aちゃんはさ、永瀬くんのこと好き？」

「え、」

「永瀬くんのことが好きなら無理にとは言わない。むしろ、永瀬くんとずっと関わっていくなら、紫耀と仲良くしないでほしい、って思っちゃうんだよね。だから、どっちもはやめてほしい。どっちかにしてほしい。」

「………。」

「って、これはあくまで俺の気持ちね。」

加えて、最後に神宮寺先輩は私のずっと気になっていたことを教えてくれた。そして、じゃ、紫耀と交代するね、と言い先輩を呼びに行った。

神宮寺先輩からは本気で先輩のことを思っているのだということが伝わった。ものすごく大事な友達なんだということも。

永瀬くんと関わるなら、先輩とは仲良くしないでほしい。

その神宮寺先輩の言葉の意味はわからなかったけど、どっちかにしてほしい、その言葉は私の胸に刺さった。確かに、どっちも取るなんて、それはずるいことなのかもしれない。実際、永瀬くんに嘘をついてまで先輩に会っている。

けれど、私にどっちかを選ぶなんてことはできなかった。どっちも手放したくないと思ってしまうのは我儘だろうか。