山猫と山猫［尾形百之助］弍 (ページ19)

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六十五話ページ19

尾「A、こっちこい。」

『？なに？』

尾形はAの腕を引き自分の懐へとおさめた

『！！』

尾「アシリパに取られてたからな。」

寂しかったのだろうか、尾形はしばらく彼女を抱きしめる。

『よしよし。』

尾形の背中を撫でるAは、この男をまるで猫のようだと思った。

離れたと思ったら、勝手に寂しがって今のように顔を首にうずめてくる。

『そろそろ暗くなる。戻ろう。』

尾「あぁ。」

クチャ(仮小屋)に戻った2人を確認したアシリパは

早速タタタプを始める

ア「さあ、今日はA初のタタタプだぞ！」

『チタタプ？』

Aはアシリパから小刀二本を渡された。

目の前にある肉片はリスだという。

これをミンチにしろと言われたAは一瞬生きたリスを想像してしまい自然界の残酷さを思い出してしまったのだが

自らの心を無心と化させてチタタプを始めた

『ｽﾝｯ』

杉「え？なに今の、ｽﾝｯて。なに？

　ねえ尾形くん、今のｽﾝｯていうのはなあに？」

尾「あいつは動物を料理する時に、生きてた時の姿を勝手に想像して勝手に気持ち悪くなるから

　料理する時は無心になるんだよ。」

牛「だから小樽の隠れ家の台所にいたAは
　怖く見えたのか…。」

ア「A！チタタプする時はチタタプって言わなきゃダメだ！

　ちなみに尾形はチタタプと言えないんだぞ。」

『あぁ、だって彼、いただきますもごちそうさまも、うまいもまずいも言ってくれないもの。』

尾「！？」

冷えた目を向けられた尾形はささっと牛山の後ろへと隠れた。

牛「あれはなぁ、A。尾形のやつお前の料理が好きすぎていう暇もないんd！？

　おい尾形！！やめ、おい！背中をつねるな！」

ア「尾形サイテー」

杉「サイテーよ！」

尾「悪いと、思ってる。」

『チタタプチタタプチタタプ…。』

しかしAは知っている。

いつも一番美味しそうに自分の料理を食べていたのは尾形であると。

これはちょっとした、Aのいたずら心である。

夕飯の後、一日中はしゃいでいたアシリパとAは
うとうとし始めていた。

杉「珍しいな、Aちゃんがこんなにはやく眠くなるの。」

尾「はしゃぎすぎだ。」

ついにAは尾形の肩にもたれ掛かり眠り始めた。