炎柱と火の鳥４ (ページ36)

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白兎の館ページ36

翌日、目を覚ました二人は保存食で軽い朝食をとり隊服から私服に着替え、刀を隠すと町に向かった。

町は明るい時間なのに屋台が多く祭りのように人で賑わっていた。

「まるで祭りだな！！うまい！！」

杏寿郎の手には串焼きが数本握られていた

「おい、杏寿郎…遊びではないからな…」

「すみません、父上……ですが旨いですよ。」

ぱくっ

「旨いな…」

「おーい！そこのお兄さん達！この酒も一緒にどうだい？今年はいい出来だよ！」

「一合もらおうか…」

槇寿郎は酒を買っていた。

「ところでなぜこんなに賑わっているんだ？」

「あんた達、ここに来るのは初めてかい。と言うことは白兎の伝説も知らないね。その昔、この地域は数年にわたる不作で飢餓と害獣に悩まされたんだ。ある日、獣を捕まえる罠に兎がかかっていたんだ。真っ白な毛に赤い瞳…兎は悲しい瞳を猟師に向けた。可哀想に思った猟師は白兎を逃がしてあげました。」

「雪兎だろうか…」

「白兎は何度も振り返りながらお礼を言うように去っていった。翌年、猟師も畑仕事をしていた。この年は安定した雨と日光で作物がよく育ち猟師の畑もたくさんの作物が育った。夏のある日、生い茂る雑草を刈っていると草の下にあの時の白兎が倒れていた。猟師が抱き上げると白兎は目を細めて息絶えた。その夜は満月で猟師は白兎を丁寧に祀った。月の光に照らされた兎は月に向かって昇っていった。この年、猟師の畑ではたくさんの作物がとれて飢餓が収まった……この地域伝わる伝説だよ。」

「それで白兎の面や置物、それに似せた食べ物が多いのか…」

「白兎はこの町の象徴だからね。この町には卯屋敷があってね。そこの主が白兎の生まれ変わりだと有名だよ。会えたら良いことがあるだろう。俺は会ったことはないけどな！そう言うことだ！この辺りは兎が多いが苛めたりするなよ」

「勿論だ！！」
「…そうだな」

二人が祭りを楽しんで町を抜けると大木の木陰にうずくまっている者がいた。具合が悪いのだろうか…

「大丈夫か？具合でも悪いのか」

「大丈夫です。気にしないでください。」

澄んだ女の声だった。その側には大人三人は入れるほどの大きな番傘…

「熱中症かもしれん。杏寿郎、水をもらってきてくれ。それから出来たら塩も少し」

「はい！」

杏寿郎は町に水と塩をもらってきた。槇寿郎はそれを受けとると水にほんの少し塩を混ぜて女の子に飲ませた。