炎柱と火の鳥４ (ページ20)

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師範から緋酉へページ20

「……記憶を失ってもいずれは戻ってくるのだろ。しみったれた顔は似合わん…これは土産だ」

槇寿郎の手には酒瓶が握られていた。それを見た緋酉は目を輝かせた。

『それはありがたい！千寿郎の中にいたときは飲めなかったからな！』

「現金な奴だ…それと緋酉、代々の炎柱の書記の中にお前の師範の書いた書にこれが…恐らくは緋酉に向けた便りだろう…」

緋酉は槇寿郎から書物を受けとり目を通した。

【我弟子へ
　紅葉、元気にしていたか。紅葉の剣の筋はとても優れていたよ。さすがは私の継子だ。紅葉が柱になる日を夢見ていたよ。

　紅葉に炎の呼吸の奥義を伝えようとした矢先に流行り病で子供達が度々亡くなった。緋酉は自分がいたから子供達が命を落としたと自分を責めていたね。だがそんなことはない、子供達は天命を全うしたから。子供達が命を落とした事も悲しかったが紅葉がいなくなったことも同じように悲しかった。

　もし、紅葉がこの便りを読んでくれたなら伝えたいことはただ一つ。過去にとらわれず前を向いて生きてくれ。そして、幸せになってくれ】

ぽろっ…

『師範……私は…』

私は師範と共に稽古ができて幸せだった。最高の飲み仲間達に出会えた。

私も師として弟子を育てられた…

今まで辛いことがたくさんあった。だが幸せな時もあった……

『師範……色々あったが私は幸せだったから…』

どうか安心してください…

緋酉は書物を抱き締めて涙した。その姿はいつも見る緋酉とは違った少女のような…

やがて緋酉は落ち着いた。

『ありがとう槇寿郎…』

緋酉は槇寿郎に礼を言うと土産の酒を持った。

『久しぶりに飲まないか？』

「肉体を失っているだろう。飲めるのか？」

『この酒は私に供えられた物だ。だから飲める！』

気がつけば槇寿郎はお猪口を持っていた。

お猪口は持ってきてなかったはずなのに何故あるんだ……

数年ぶりに二人は共に酒を飲んだ。持ってきた酒がその日のうちに空になった…

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一方、杏寿郎は胡蝶の案内である屋敷へと向かった。

「着いたわよ。ここが金成が住んでいた屋敷よ」

「ありがとう胡蝶！」

「なるべく声を押さえてくださいね。煉獄さんは隠になってるんですから…」

胡蝶が中にいる使用人に声をかけると、しばらくして二人は金成の父の元に通された。

金成の父は前に胡蝶が会ったときと比べて痩せていた。