#81 ページ43
目が開いた。
これも夢かと思ったが、どうやら違うらしい。
手足の動かしにくさが現実だ、と言っている様だった。
＿＿俺は生きているのか？
自分の胸の辺りの傷を見ようとするが、包帯で見えない。
感覚的に流血はしていないと思うが…。
上半身を起こし、脚を床に持っていく。
夢の中よりは動かしにくいが、自分が想像していたよりは動いた。
立ち上がろうとしてみると、膝が抜けた。
大きな音が鳴る。
それと同時に俺に繋がれていた線が抜けた。
先程まで一定のリズムを刻んでいた電子音は無くなり、
かわりに途切れない長い音を鳴らした。
…耳が痛くなるな。
俺は壁に掴まり、立ち上がる。
壁をつたっていれば案外歩けそうだ。
俺は電子音から逃れるために部屋を出た。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿
部屋を出て散歩をした。
もちろん、壁つたいにだが。
ここは俺の記憶にある我々国の城とは違った。
そう言えば崩れたんだな、とか思いながら歩く。
前よりも大きくなっている気がする。
歩くのが大変だ。
ロボロに道を聞こうと耳に手を当てるが、
インカムが無いことに気がついた。
これでは迷子になってしまう。
道が分からないのは困る。
…いや、もう腹を括ろう。
この城を冒険する感覚で歩こう。
初めてここに来た時の様に。
歩いていると少しずつ脚が慣れてきたのか、
壁に着く手は片方だけで十分になった。
窓がある廊下まで来た。
外を見ると昇りきっていない太陽が見える。
今は9時、くらいか…？
時間の感覚を手に入れることが出来たので
次は年、月、日の感覚を手に入れようと試みる。
俺の感覚が鈍っていなければ掴める、筈。
俺が撃たれたのが、1932年9月16日。
太陽の昇り方を見るに今は恐らく9月。
日付は25日、と言ったところか。
俺達がθ国に買ったと仮定して、
この城の建て直しにはθ国の兵士や建築業の人間も関わった筈だ。
城の建て直しは…1ヶ月もしない内に終わったのだろう。
……これでは、年の予測の役に立たないな。
感覚でいこう。
恐らく3年は経っている。
つまり俺の予測では今日は1935年9月25日。
ここまで予測したのだ。答えを見なければ満足できない。
俺はカレンダーのある場所を探し始めた。
皆の仕事部屋なら、ありそうだな。
適当に歩いて仕事部屋があったら入ろう。
そう思って俺は階段を上った。
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと - お疲れ様です！何と言ってもあの話が…と言いたいところですが何故か一番好きなのは作者様の敬語でユニークなことを言ってる時ですかね…(何だこいつ)兎にも角にも、楽しませて戴きました！面白い作品を世に放って下さり有難う御座います！！ (7月24日 9時) (
レス) @page50 id: ffe5a6a019 (このIDを非表示/違反報告)
さささ(プロフ) - わんぱんさん» そういうことです！読んでいただきありがとうございました！ (2020年11月22日 20時) (レス) id: 328f3541a2 (このIDを非表示/違反報告)
わんぱん(プロフ) - ああああ！！！61とか紛れ込んでると思ってたがそういう事か！すごい面白かったです！感動しました！素敵な作品ありがとうございました！ (2020年11月20日 7時) (レス) id: b542029aeb (このIDを非表示/違反報告)
さささ(プロフ) - れいんさん» ありがとうございます…！ (2020年4月23日 19時) (レス) id: 328f3541a2 (このIDを非表示/違反報告)
れいん - お疲れ様です。とても感動しました。 (2020年4月22日 14時) (レス) id: 4d71c550a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さささ | 作成日時：2020年3月18日 8時
