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Episode 2 ページ3

バンッと音を立てて扉を開け、愛車である白のRX-7に乗り込む。
何だか今日は、どっと疲れた。
誰も座っていない助手席にちらりと目をやる。
彼奴が生きていた時は、よくAをこの助手席に乗せて現場に駆け付けたりしたと思いだす。

――彼奴を轢いたあの車。
確証はないが、犯人の予想はついている。
恐らく烏の様な闇に包まれた、あの黒の組織。
幹部程の人間であれば、あんなお粗末な殺り方はしないと思う。
きっと、コードネームも持たないような下っ端の犯行だろう。

そう、Aもあの組織に潜入していた捜査官だった。
コードネームは「コープス」。コープス・リバイバー……死んでも、貴方と――
人に取り入るのが上手い、優秀な捜査官だった。

『私がNOCということが、ジンに薄々感づかれている気がする』
そう、相談されたことがあった。
しかし、彼奴は自分がNOCだという素振りは微塵も見せていなかったし、上手に組織に馴染めていると思っていた。
Aが薄々感づいていると言っていたことが本当だったのなら、あの事故、否事件は彼奴の話をちゃんと聞いてやらなかった俺に責任がある。
Aは恐らく自分を轢くために突っ込んできた車に気が付き、俺を巻き込まないために自分だけが犠牲になった、というところだろう。何にしろ悪いのは全て俺だ。俺はこの責任をとって公安警察官という職業を辞めるべきなんだろう。しかし、日本を守るという自分の義務を捨てきれない訳じゃ無い。もういっそ罪を償い俺も死ねばいいのか、なんてらしくない考えにまで至る。

『片桐さんの分まで、この国を守って下さい』
姫宮にそう言われた。
でも、そんなこと俺には出来ない。
この国は、俺一人で守っているわけではない。
仲間がいて、相棒のAがいて、それでいて成り立つ仕事なのだ。

「……帰ろ」
考え出すとキリがない。取りあえず家に帰ろうと車のエンジンを入れた。


――俺はその日、初めて自らの目を疑うことになる。


「…ただいま」
誰もいないはずの家に小さくそう声を掛け、ガチャリと今入ってきた扉の鍵を閉める。
「……ハァ」
溜息をつきながらネクタイを外し、リビングへと続く扉を開ける。


『あ、お帰り』

――――……

「はあああああああああああッッ!!?」

叫ぶのも無理はない、と、思う。
リビングの中央に置かれた黒いソファに、さっき棺の中で眠っていたはずのAが、ちょこんと腰掛けていたのだから。

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零ーレイー少しの間低浮上(プロフ) - あいうえおさん» 閲覧&コメント有難うございます!うわ〜ほんとですか;つД`)ありがたいお言葉感謝します!!少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです♪ (2018年1月25日 20時) (レス) id: 4f7e7a51d9 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 号泣しました。本当にいいお話で感動しました。 (2018年1月25日 17時) (レス) id: 3fd6742cd5 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイーついった始めました(プロフ) - cherryさん» ありがとう~~~!!勿論そっちも頑張るよ!!これからも応援よろしくお願いします!!!(*^▽^*) (2017年7月24日 15時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
cherry(プロフ) - 完結おめでとう!大好きな作品が終わっちゃうのは寂しいけど完結まで読めてとっても良かったです。もう1つの作品も頑張ってね! (2017年7月24日 15時) (レス) id: 84049ed362 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイーついった始めました(プロフ) - cherryさん» ふわあああああありがとうありがとう(泣)そんな風に言ってもらえてうれしいよ~~!!!伝わればいいな、って思って書いたものがちゃんと伝わってるって嬉しいね(泣) (2017年7月19日 18時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:零ーレイー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/  
作成日時:2016年11月29日 23時

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