【名探偵コナン】 Lena 【安室透】

#39 ページ40

バーボンは席に腰掛ける。
「うん、美味しい！やっぱり菜月の作るご飯は美味しいですね」

チクリ、チクリ。
違和感がどんどんと増していく。

「最近どうですか？組織のこととか、仕事のこととか」
いつの日かバーでこんな話をしたなと思いだす。けれども、あの日と今日では、何かが違った。
「仕事って？アルバイト？」
「違いますよ……ゼロの方、です」

違和感が確信へと変わった。
私は右手で頬杖をつき、ワザとらしくため息をついてみせた。
「詰めが甘いわ、ベルモット。……バーボンは私のこと、菜月とは呼ばないもの」

上目遣いで挑戦的に笑って見せると、バーボンもフッと笑う。
「あらぁ、なかなかの変装だと思ったんだけど？」

突然口調が変わる。バーボンの面をしたベルモットが首元に手をかけた。
ビリッという音がしたかと思うと、顔が真っ二つに裂ける。零れ落ちる明るい綺麗なロングヘア―。
「ジンはまだバーボンが裏切者だと？」
「Such that.それでバーボンの彼女の貴方にも疑いをかけられているのよ」
「いい迷惑ね…それでカマをかけに来たの？けど残念ね、私たちはNOCではない」

ベルモットは胸元にあるボタンを押す。すると、ぷしゅうと音がして豊満な胸が膨らむ。少しだけ羨ましい、なんて別に思っていない。
「私に言ったって仕方ないじゃない？疑っているのはジンなんだから」
「それで、バーボンは今何処に？」

ベルモットは鬱陶しそうにその長い髪をかきあげ、眉を寄せて私を見る。
「私が貴方にその情報を教えると思う？私だってまだ貴方がNOCじゃないと確信した訳ではないの」
「―――ッ！」

私は思わず両の掌でテーブルを叩き、勢いよく立ち上がった。
後ろに倒れた椅子がガタッと大げさな音を立てる。掌がじんじんと熱を持った。
「バーボンは何処？何処にいるの！？お願い教えて！教えなさい！！」
ベルモットは一瞬だけ驚いた顔をしたが、またすぐに呆れたような表情に戻る。
「はぁ……それが人にものを頼む態度かしら？そもそも貴方が彼を助けるメリットは何？彼は裏切者だというのに」
「バーボンは裏切者じゃない！」
思わず声が裏返る。

「…喧嘩したこと、酷いこと言っちゃったこと……まだ謝れてないの」
自分でも情けなくなって、きゅっと唇を噛む。

ベルモットはつんとそっぽを向き、小さな声で「第三倉庫」とだけ呟いた。
「！…ベルモット、」
「勘違いしないで頂戴？協力したわけではないわ」

私は車のキーを掴み、玄関から飛び出した。

#40→←#38

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す