#34 ページ35
「はぁ…?こんなときに三人を置いてのこのこ戻れって言うの?」
「そうだ。早く行ってくれないか。解除に集中できない」
バーボンは目も合わせようとせずに淡々と冷たい言葉を吐く。
その横顔はゾッとするくらい無表情で、怖くなった。
「なんッ…で?私は邪魔だってこと?」
「ああ、そういうことだ」
何だかだんだんと頭に血がのぼっていく。頭は熱いのに、手足は妙に冷たかった。
「で、でも、せめて何か手伝うだけでも……」
「必要ない」
(分かってる。私なんて要らないって。でも―――)
「…そんな、私はただ、バーボンのために――――」
「俺がいつそんなことを頼んだ!!?」
声を荒げたバーボン。キッとこっちを睨みつけた目は、彼のものではないようだった。
そこにいる彼は、私の知っている彼ではない。
その綺麗な青い目は、いつも優しい光を宿していたはずだった。
にこにこと柔らかく微笑んでいた彼の面影はもう、ない。
「そんなに俺のことが信用ならないか!?そうじゃないなら早く戻れ!!」
ガンッ、と頭を殴られたような衝撃が走った。
体がどんどんと冷たくなっていく。息が苦しい。
バーボンにこんなに怒鳴られたことは、今までに一度もなかった。
何故?何故彼は私をそんなに―――――
(ああ、そうか)
――――――嫌いなのか。
仕事も出来ない。役にも立たない。なんでも出来る天才の彼とは違う。
鈍臭いし、知らない男に騙されて拉致されるような女だし、書類の作成も大半をバーボンに任せてしまうし。
いい加減嫌気が差したのかな。けれど、”仕事だから”ってずっと我慢してたのかな。
それはさぞ迷惑をかけたことだろう。私なら大嫌いな奴と一緒に暮らすなんて御免だ。
バーボンもそう思っていたのか。なのに、恋人のフリなんて演じて、偽りの優しい笑顔を見せて。彼のポーカーフェイスに見事に騙されたってことなのか。
そこまで考えると、何だかすごく腹が立ってきた。
それと同時に、何だかすごく悲しくもなった。
「………ああ、ああそう。だったら一人で頑張ってね」
私の言葉に彼は返事をしなかった。
胸のあたりが、ギュっと痛くなった。
「ごめんね、気付かなくて。最初から私なんて嫌いだったんでしょ?」
「…!待てレナ、違う―――」
バーボンが顔を上げた。けれど私は踵を返し、階段を駆け下りていく。
私の名前を呼ぶ声が聞こえたが、知らないふりをした。
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零ーレイーついった始めました(プロフ) - 美空さん» 閲覧&コメント有難うございます!本当ですか!嬉しいです( *´艸`)頑張らせていただきます♪ (2017年8月16日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
美空 - この小説すごく泣けました!新作楽しみにしてます(^^) (2017年8月16日 14時) (レス) id: 611dba761a (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - 4696猫さん» 閲覧&コメント有難うございます!神作品!!?うわああ有難うございます!!感激です……! (2017年1月12日 22時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
4696猫(プロフ) - とても胸が締め付けられるような、そんな感じがしました!とても面白かったです!!コナン好きな私にとっては神作品でした!!お疲れさまですヽ(*´∀`)ノ (2017年1月12日 21時) (レス) id: 2682e5942a (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - れいにゃんさん» 閲覧&コメント有難うございます!神だなんて……私なんて全くですよ;;お褒めの言葉ありがとうございます! (2016年10月16日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零ーレイー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/
作成日時:2016年5月26日 18時