みんなでご飯 ページ7
「今から隊舎に帰ってもご飯1人でしょう?どうせならここで一緒に食事しない?」
「え、いや、でも……」
「しのぶちゃんの好物も用意してきたし、わたしも帰って1人で食事するよりは嬉しいなって…」
「準備がよろしいこと。」
「…………じゃぁ……」
座り直した彼に勝手知ったると湯呑みを出して渡す。
「わたし、AA。元隊士だったのだけれど色々あって食事係付きになったの。何かあったら厨に居るから声かけてね。」
「不死川玄弥…」
「不死川…?不死川ってもしかして、実弥様のご親族?」
「兄ちゃんのこと知ってんのか?」
テキパキと準備をしながら、しのぶさんの前に生姜の佃煮を広げてお茶を湯のみに注ぎ、聞き慣れた苗字に問えば少し明るくなった少年、もとい玄弥くん。
「弟さんだったのね。確かにお顔がそっくりだわ。」
「……っ」
兄に似てると言えば照れているのか小さく俯いて手をソワソワさせている。
可愛い生き物だ。
「実弥様には修行中もとてもお世話になったんですよ…厳しいけど、お優しい方です。」
「あら、あれだけしごかれておいて優しいなんてよく言えること」
修行中のボロボロになったわたしを思い出してクスクス笑うしのぶちゃんが憎らしいけど、実に本音だ。
不死川実弥という男は修行中はそれこそ容赦ないが、ひとたび修行が終われば隊士を労い、食事や身の回りに気を遣ってくれる。
それも隊士の気付かぬ所で。
「きっと素敵なお兄様だったんでしょうね。」
「あぁ…」
「あら、Aちゃん、この佃煮最高に美味しいわ」
「それはよかった!さ、玄弥くんも食べて食べて!」
「いただきます……」
行儀よく食べ始めた彼の反応が気になり見つめれば、彼の箸がはたりととまる。
「あ、えっと…美味しくなかったかな?」
「美味い…」
ポツリ、零すようにそう呟いたあと、止まらなくなった箸に安堵して、自分も食事に手をつける。
やはりわたしは前線で戦うよりもこっちのが向いてるなぁ、なんて改めて実感して。
美味しそうに箸を進めてくれる玄弥くんとしのぶちゃんを見て心底幸せな気持ちになった。
「こんなに食った、あ、いや、食べたのは久しぶり、です。」
「ふふ、もっと砕けてもらっていいよ!わたしもう隊士でもないし!」
「はぁ…」
「おっと、もうこんな時間!任務帰りの人達の食事の準備があるから戻るね!しのぶちゃん、ありがとー!」
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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです!一気に読んじゃいました!!!玄弥可愛い...!! (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2020年1月4日 15時