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1人にしないで ページ35

「……フッ…」

わたしの顔を暫し見つめた後、空気を漏らすように小さく笑った彼にわたしはキョトン、として、そして憤慨した。

「だ、だから嫌だって言ったのに!笑うなんてひどい!」
「うるせぇ、Aが可愛いのがいけねぇんだろうが!」

絶対不細工な顔してたのに、それを可愛いだなんて笑い宣うものだから憤慨してるのに照れくさいやらで握りしめた拳が行き場を失う。(叩いたところで彼からすればさして痛くもないだろうが)

「…明日からは大丈夫だな?」
「ん、ごめんね…ありがとう…師範の分もわたしは生きる。生きなきゃ…。」
「それでいい。」

頬を優しく撫でられて、それに抗うことも無く、それに手を重ねて頬ずりした。

「温かい……」
「A、好きだ……」
「ん、わたしも……」

ぎゅ、と抱きしめあって。
互いの体温が移って心地よくなるほどの時間そうしたまま、静かに時は過ぎていく。

どれ程の時間そうしていただろうか。
髪を優しく撫でる彼の手が心地よくて、何度も意識を手放しそうになるわたしを、見かねた彼がふわり、と抱き上げた。

「ふぇ?」
「眠いなら布団で寝ろ…暫くちゃんと寝てないだろ?」
「ん…怖かった、から…あんまり熟睡出来なくて…」

そっとわたしを布団の上に横たえて、丁寧に布団を掛けてくれる。
そうしてまた頭を撫でて立ち上がろうとする彼の腕を、無意識にはしりと掴んだ。

「や…行かないで。1人にしないで…。」
「けどなァ…」

困ったように頬を搔く彼にお願い、と懇願すれば、渋々と腰を下ろす。

「そこじゃ寒いし、一緒に寝よ?」
「アンタそれ、自分で何言ってるかわかってんのか…?」
「なにが?」

わたしの言葉に真っ赤になった彼に首を傾げるも、落ちてくる瞼が限界を訴えていたので上手く思考が回らない。

「……生殺し……」

物凄く長めのため息をついたあと、そう呟いて、そして観念したかのように同じ布団に潜り込んだ。
彼はわたしの頭の下に腕を差し入れて、そのまま優しく抱き寄せられたので、その温もりと優しさがうれしくて擦り寄った。
空いた方の手に自分の手を絡ませて、彼の温もりとほのかに香る彼の香りに酷く安堵して。

襲い来る睡魔に抗うことも出来ずに、わたしは久しぶりに朝まで熟睡したのだった。

わたしが絡めた手を抱きしめるように眠ってしまったので、彼の手が薄い夜着越しにわたしの乳房に当たっていて彼が一睡も出来なかった事を、この時のわたしは知る由もない。

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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです!一気に読んじゃいました!!!玄弥可愛い...!! (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな | 作成日時:2020年1月4日 15時

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