大人の画策 ページ31
しのぶの言葉に興味津々の様子で医務室の椅子へと腰を落ち着けた宇隨。
「ただ、先程も言った通りわたしの勘でしかないんですが…Aさんと不死川さんの弟さんが、良い仲なんじゃないかと思いまして。」
「んァ?何でまた…」
「よく2人で話してましたし、時々なんて言うか、あるじゃないですか、意識して気まずい、みたいな。そんな空気を2人から感じるんですよねぇ」
「へぇ…。で?俺はどうすりゃいいんだ?」
宇隨の言葉にしのぶはいたずらっぽい笑顔を向けた。
「やはり困ってるお姫様には王子様が必要だと思うんです。Aさんがあんな風になってから、彼もAさんにどうやって接していいのか図りかねているようですし、そこは大人のあなたが上手く手解きすれば、Aさんは元気になって、あの2人も上手くいって、丸く収まると思いません?」
「そんなに上手くいくもんかねぇ、不確定要素多くねぇか?」
「女の勘はよく当たるんですよ」
「女の勘ねぇ…ま、いっちょド派手にやってやるかァ」
長閑な医務室内で、2人の画策が始まった。
「よォ…ちょっとツラ貸せや」
「は…?」
その夜、目的の人物を見つけた宇隨は背後からその人物の肩を叩いて悪い笑みを浮かべた。
突然柱に話しかけられた事と、どう考えても悪い顔をしている上司に混乱しかない当の本人はポカンと口を開けて宇隨を見たが、有無も言わさず人も疎らになった食堂に引き摺られるように連行されたので付き従うしか無かった。
「……なんスか…」
「俺の勘違いなら聞き流してくれりゃぁいいんだが、お前、好いた女が苦しんでるのに何とも思わねぇのか。」
「なっ…んの事ですか…」
「ほぉ、俺の前でとぼけるってか」
カマをかけるつもりで言った宇隨だが、少年の反応に確信を得たため更に畳み掛ける。
しのぶの『女の勘』というやつも、存外当たるもんだと感心した。
「Aの事好いてんだろうが。なら何で支えてやんねぇんだよ」
「それは…」
「おい糞ガキ、てめぇ男だろうが。男ならガキでもガキなりに好いた女の1人くらい支えて守ってみせろ。このままだとアイツ、いつかダメになっちまうぞ。それでも良いんか?!」
言い淀む少年に宇隨が厳しく喝を入れるも、少年は悔しそうに唇を噛み締めて、その表情に影を落とした。
「…っ…俺に、何が出来るんですか。あんな状態のAに…」
「そんなんてめぇで考えな。アイツを幸せにしてぇのはてめぇだろうが。大事なのはてめぇのその気持ちだけだろ。」
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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです!一気に読んじゃいました!!!玄弥可愛い...!! (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2020年1月4日 15時