終わりの見えない悲しみ ページ28
それから数日。
私はいつも通りの日常を過ごしていた。
決められた当番日に隊士達への食事を作りながら時たま蝶屋敷の仕事の手伝いをして。
非番の日は厨の空いた場所を借りて甘味を作っては甘露寺さんと食べながらお喋りをした。
今日もいつも通りの日常だった。
…その時までは。
今日は久しぶりに作った鮭大根がとてもいい出来だったので、義勇様に差し入れに行こうと足を運ぶ所だった。
義勇様の姿を遠目に確認して声をかけるために近くへ寄ろうとしたその時、バサバサとけたたましい音を立てて1羽の鎹鴉が舞い降りた。
その姿には見覚えがあった。
師範の鎹鴉だ。
「煉獄杏寿郎、無限列車乗員乗客救出、死者ハ在ラズ!任務完了後ニ上弦ノ鬼ニ遭遇シ敗レ死ス!」
「……そうか」
「っ!!!!」
「Aっ」
義勇様に向かって伝令を終えた鴉が、わたしが持っていた食器を地面に落としたガシャン、という大きな音に飛び上がり、それにつられて義勇様もこちらを向いた。
「お前…今なんて言ったの…?嘘…嘘だよねぇ…?」
「A、落ち着け…」
「師範が、死んだなんて…そんなの…そんなの嘘だよねぇ?!?!」
鎹鴉が嘘なんて伝えるはずもないのは重々に承知の上で。
それでも受け入れ難い事実に怒りと悲しみで涙が止まらなかった。
「だってついこの前、幸せになれって馬鹿みたいに笑って…お前の幸せは俺が守るって…そう言ったのに、どうしてよォ!!!!!あぁぁあぁああっ!!!!」
泣き叫んで崩れ落ちたわたしを義勇様が支えてくれた気がしたけれど、それすらも定かでないくらい泣き喚いて。
もう涙なんか出ないんじゃないかってくらい泣いて、そこからはもう、記憶がなかった。
気が付いたら自室で横になっていて。
「…目が、覚めましたか?」
「し、のぶ、ちゃ…?」
「あなたがひきつけを起こして倒れたって冨岡さんが凄い顔で飛び込んで来るものだから、何事かと思いましたよ。」
穏やかにそう言ったしのぶちゃんの言葉に、また涙が込み上げてくる。
「……暫くは休んでいいと、御館様も仰っていましたから。」
「………」
嗚咽を漏らす私を気遣うようにそう告げた後、あぁ、それから。と彼女は続ける。
「不死川さんが…あぁ、弟さんの方ですけど。彼もあなたが倒れたと聞いて血相変えて様子見に来てましたよ。Aさんは眠っていたので声もかけず帰りましたが…」
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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです!一気に読んじゃいました!!!玄弥可愛い...!! (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2020年1月4日 15時