集中する熱 ページ26
炭治郎くんが角を曲がったところで、彼が何か言ってる声が聞こえたためふと顔を上げると、ここ最近ずっと想い焦がれていた彼の顔が見えて。
向こうも私に気付いたのか一瞬目を見開くが、そのままこちらに歩いてくる。
「久しぶり、玄弥くん…」
「あぁ、こんなとこで何してんだ?また怪我でもしたのか」
「ううん、今日は君の同期達の顔を見に来ただけ。」
「めんどくせー事してんなー」
だってそれがお仕事だもの、と言えば彼からそーかよ、と素っ気ない返事が返ってきた。
「あ、あの…玄弥くんこれ…借りたままだったから…」
「あぁ。」
丁寧に畳んでおいた借りていた羽織を彼に差し出せば、そう言えばそうだったな、と受け取る。
彼が羽織を受け取る際にほんの少しだけ指先が触れて、たったそれだけなのに指先に全部の熱が集中したのかと思ってパッと手を離す。
「……」
私の行動に彼も気付いてか気付かずか。
2人して気まずい空気になってしまい黙り込んでしまった。
と、突然ガラリと扉が開いてしのぶちゃんが顔を出す。
「あら、2人してそんな所で突っ立って何してるんです?」
「あ、ううん!用事終わったから私は行くね!」
しのぶちゃんの登場に安堵の気持ちと残念な気持ちとで私の心はめちゃくちゃだった。
「千寿郎くんに癒されにいこう……」
暴れる鼓動を押さえつけて、わたしはその足で師範の屋敷へと向かうことにした。
「千寿郎くんっ」
「Aさん!お久しぶりです。どうかされたんですか?」
「師範居るかしら?」
玄関の掃除をしていた千寿郎くんに声をかければ庭で鍛錬しているとの事だったので、お邪魔してお庭に居るであろう師範の元へ向かった。
「師範、お久しぶりです。」
「おお!Aか!!久しいな!」
わたしを見るやいなや鍛錬を切り上げ、師範が縁側にお茶を用意してくれた。
暖かいお茶を口に含むと、先程の心の乱れが嘘のように落ち着く。
「その後どうだ、食事係付になってからは順調なのか?」
「楽しいですよ!師範には申し訳ないんですが、わたしにはこちらのが向いていたようです。」
苦笑しながらそう告げれば、師範は何でもないように笑ってそうかそうかと頷いた。
「時にA、何か話があってここに寄ったのだろう?」
「師範には何でもお見通しですね…」
「よもや!何年お前と共に過ごしてきたと思っている」
「ふふ、そうですね」
ポカポカした縁側の陽気と師範の優しい声色に自然と笑顔になれた。
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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです!一気に読んじゃいました!!!玄弥可愛い...!! (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2020年1月4日 15時