初めての ページ22
「そんなんで本当に元隊士なんかよ。」
「言いたい事はわかる。でももう、誰一人失いたくないの。目の前で失くす痛みも辛いけど、でも、ただ待つっていうのも、結構辛いよね。」
「……」
わたしの言葉に彼もそれ以上は何も言わなくて。
ただただ2人で漆黒に浮かぶ煌々とした白い輝きを見つめていた。
「はっくちっ」
「そんな格好でいるからだァ、風邪ひくぞ。」
ふわり、彼の着ていた薄羽織を自然な動作で掛けられて。
彼の温もりが少しずつ伝わってくる。
「それでも着てろ」
「暖かい…ありがとう。」
掛けられた羽織をマジマジと眺めて、改めて彼が男の子なんだなぁ、と自覚する。
彼の着丈に丁度いいそれもわたしが羽織ると袖も丈も長くて。
「ふふ…」
「何笑ってんだァ」
「大きいね、なんか、ちょっと恥ずかしい。」
照れくさくなって彼を見上げてそう言って笑えば、今度は彼がみるみる真っ赤になってしまった。
「へ?!わたしなんか変な事言った?」
「うるせぇ何でもねェ黙ってろ」
「何で急に怒り出すの?!」
フッとそっぽを向いてしまった彼の腕を掴んで問い詰めようとしたら、あークソっ!って吐き捨てるように呟いた彼に、気が付いたら、柱に両手をつかれて閉じ込められていた。
「えっと、あの、玄弥くん…?」
「いい加減にしろよォ、俺が歳下だからってなぁ、油断してんじゃねェぞ…俺だってなァ、男なんだぞ」
「!!っ…んっ……」
真っ赤な顔でそう捲し立てられて、そのまま、彼の唇がわたしのそれに重なった。
驚きのあまり目を見開いてしまったけれど、唇を重ねたまま至近距離で玄弥くんが、艶っぽい視線でわたしを見るから恥ずかしくて目をつぶったら、角度を変えて啄むように何度も唇を食まれる。
「ん、ふっ…は…げ、んやく…」
やっと唇が離れたけど今度は自分の心臓の音が煩くて、わたしを見下ろす彼と視線を合わせることが出来なくて。
「何で抵抗しねェんだよ」
「な、何でって!いきなり接吻してきたのはそっちでしょう?!」
彼の理不尽な物言いに腹が立ったが、確かに抵抗の1つくらい見せてよかったのではと、思った。
いくら驚いていたとは言え、されるがままだった自分が恥ずかしい。
「これに懲りたらなァ!少しくらい男に警戒しろォ。」
「何よ!玄弥くんのばかっ」
バッ、と彼の胸を押し返して(物凄く硬かった…男の子って皆あんな逞しいのだろうか)、真っ赤になっているであろう顔を隠して一目散に自分に与えられた部屋へ走って逃げた。
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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです!一気に読んじゃいました!!!玄弥可愛い...!! (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2020年1月4日 15時