生きていてくれて。 ページ21
｢ごめんね、置いていって…あの時助けられなくて、ごめん。｣
｢Aちゃんが謝る事じゃないよ…Aちゃんは自分のするべきことをきちんと成し遂げたんでしょう？｣
でも、けど。
わたしがもっと知識があったなら。
あるいは薬に精通していれば。
もっと君を苦しめずに助けられたかもしれない。
そんな後悔を知ってか知らずか、彼はとても優しい音を奏でていて。
｢ありがとう……。｣
わたしのその言葉に、優しい優しい笑みを零した。
｢それに、あの時Aちゃんが来てくれなかったら、正直生きることを諦めるとこだった。『生きて』って、言ってくれて、ありがとう。｣
常に死と隣り合わせのこの使命に、『生きろ』、なんて軽率だったかもしれないと、常に後悔と隣り合わせの私にとって、それは救いの言葉でしかなかった。
どんな状況であっても、生きてて欲しい。
そんなことはわたしの我儘であることも充分承知である。それでも生きてて欲しかった。
隊士として戦うことが出来なくなっても、例え人としての機能を失ったとしても、それでも生きていて欲しかった。
｢また明日から美味しいご飯頑張って作るから、たくさん食べて元気になってね。｣
｢勿論Aちゃんの作ったご飯なら死んだって完食するから安心して！｣
｢死んだら食べれないからっ｣
彼の冗談に小さく笑って。
｢じゃあ、今日はもう帰るね、2人にもよろしく。｣
両隣に眠る少年たちへの挨拶も託して、その場を後にする。
しのぶちゃん達にはまた明日、話をすればいいだろう。
そう自分の中で解決して、蝶屋敷から隊舎へと足を向けた。
誰かを助けたい、そう思った時に自分の武力程度では誰を助けることもままならない、まして薬学に精通している訳でもなく、隠のように隠密に動ける訳でもない。
今の自分には、こうして美味しい食事を作って、彼らの身体の基礎を守っていくことが、わたしの役割なんだと言い聞かせて。
それでも。
隊舎に戻った時に、顔見知りが生きていてくれたひどい安堵感に、食堂の前の廊下で1人溢れる涙もそのままに息を吐いた。
ゆるりと、吐いて。
大きく吸って、また吐いて。
｢オィ、どうしたぁ？｣
そんな私の前にふらりと、彼はまた現れた。
｢…近頃よく会うね｣
｢今日はたまたま悲鳴嶼さんが任務だから手が空いて…なに泣いてんだ｣
｢あ、これ？何でもないの。安心したら、つい。｣
ここに戻ってくるまでの経緯を話せば、彼はまた呆れたように小さく笑った。
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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (
レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです！一気に読んじゃいました！！！玄弥可愛い．．．！！ (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひな | 作成日時：2020年1月4日 15時
