無力 ページ20
「鬼がなんだって?坊主ゥ…鬼殺隊として人を守るために戦えるゥ?」
「やめ、実弥様っ」
ちゃり、と柄を握る音がして、この先の光景を想像し、実弥様の方へ身体が動く。
「そんなことはなァ…有り得ねぇんだよ馬鹿がァ!」
「お願い辞めてっ!!」
わたしの叫びも虚しく、実弥様は禰豆子ちゃんの入っている箱を無慈悲にも自らの日輪刀で突き刺した。
ポタポタと箱の中から滴り落ちる紅い液体に絶句し、わたしはその場に蹲る。
と、蹲ったわたしの横を物凄い勢いで炭治郎くんが飛び出していった。
「俺の妹を傷付ける奴は柱だろうが何だろうが許さない!!」
「ハハハハ!そうかいよかったなァ」
「やめろ!もうすぐ御館様がいらっしゃるぞ!」
『御館様』という言葉にピクリと反応した実弥様の動きが一瞬鈍ったその間に、炭治郎くんが見事に実弥様の顔面に頭突きをかましていた。
これにはわたしも目が点になったが、義勇様も同じような顔をしていたし(むしろ少し呆れた顔をしていた)甘露寺さんに至っては思いっきり噴き出して笑っていたので他の柱の面々から顰蹙を買うと思ったのか顔を隠し俯いて小さな声で「すみません」と呟いていた。
それから御館様がいらっしゃって、わたしが御館様の命を受けて隠密に動いていたことが明るみになりわたしは無罪放免となったけれど、炭治郎くんと義勇様が御館様が容認している事で断りもなく(何かあった所で認められたとは思いもしないが)鬼連れのまま隊士として動いていたことが責め立てられ、鱗滝様の文と御館様の言葉により場が鎮められた事でことは落ち着いた。
その後炭治郎くんは実弥様の行動に憤慨して怒りを顕にしたが、無一郎様の叱咤により場は丸く(?)収まったので、わたしは元の持ち場に戻って夕飯を拵えている。
その最中、気がかりで仕方ない事があって。
どうしても確かめたくて、食事の支度を終えてから蝶屋敷へと向かう。
「我妻くん…?」
「……A、ちゃん…」
そう。
彼の安否が気になって仕方なくて。
「よかった……君が無事で、本当に良かった…」
彼を最後に確認したのは毒に侵されて息も絶え絶えの状態で。
自分の不甲斐なさに悔しさを抱えながらその場を後にした事をずっと後悔していた。
夕方蝶屋敷に強制連行されて眠っていたボロボロの炭治郎くんを挟んで伊之助くんも静かに眠っていたが、(もしかしたら静かだっただけで起きてはいたかもしれない)我妻くんのその応答の声を聞いて酷く安堵した。
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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです!一気に読んじゃいました!!!玄弥可愛い...!! (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひな | 作成日時:2020年1月4日 15時