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あたたかくて哀しい音 ページ16

「大丈夫?…じゃないよね、外傷より中のがまずそう。」
「俺より禰豆子を…」
「わかった。」

炭治郎君よりも外傷のひどい禰豆子ちゃんの傷の手当をする。
と言っても、鬼である彼女の傷は治りが早く、既に出血の止まっている傷も多かった。

「わたしの手はあまり必要ないみたい。」
「あ、Aさん…あの、禰豆子は」
「知ってる。だから大丈夫だよ。」

彼女の傷を見ているわたしに不安そうにしている彼にそう告げれば、見るからに安堵した表情を浮かべた。
わたしが傷の手当をしている間に、義勇様が流れるように鬼を始末していて。

身体だけになってもこちらに向かってくる鬼に一瞬身構えるがその身体は目の前で力尽きた。
力尽きて尚懸命に伸ばされた手。
炭治郎くんはその身体に涙しながらそっと手を添えた。

目の前の2つの身体から酷く悲しい音と、悲しいけど暖かい音とが混ざり合うように響いて。

塵となっていく身体を横目に、わたしも酷く泣きたくなった。

後に残った着物の上に乗せられた足が視界に入って顔を上げれば、無表情の偉い人。

「人を喰った鬼に情けをかけるな。」

そう言い放った彼にわたしは何も言えなかった。
けれど、這いつくばったままでも必死に妹を守り続けたこの子は強い眼差しでそれに食ってかかる。

なんて優しい子なんだろう。
優しくて、哀しい。

そんな彼らのやり取りの傍ら、地を踏む音にハッとする。

「義勇さ…」

ぱっと顔を上げれば彼も気配に気付いたようで。

「伏せろ!」
「んグッ」

……思いっきり頭を抑え込まれたため変な声が出てしまった。
その頭上でキィンと勢いよく刃の交わる音が響く。

「あら?どうして邪魔するんです冨岡さん」
「しのぶちゃんっ」
「……」

聞き間違えるはずもない彼女の声に顔を上げれば(土の匂いがしたのでもしかしたら私の顔には泥が付いていたかもしれない。)正面に見知った彼女の顔が。
けれど非常にまずい状況だった。
恐らくしのぶちゃんは何も知らない。
このままだと隊士同士…しかも柱同士の戦闘なんていう地獄絵図が始まってしまう…。

「鬼とは仲良くできないって言ってたくせに何なんでしょうか。そんなだからみんなに嫌われるんですよ。」
「……」

彼女の辛辣な物言いにわたしも炭治郎くんも目を見合わせる。

「さぁ冨岡さん、どいてくださいね」
「……俺は嫌われてない」
『…………』

え、この状況でそこ?って思ってたら炭治郎くんも同じような顔だったので心底安心した。

逃走→←対峙



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ひな(プロフ) - とろ玉うどんに使われてる器さん» コメント頂き有難うごさいます。面白いと言って頂けて嬉しいです。拙い文章ですが少しずつ更新していきますのでお暇つぶしにでもして頂けたら嬉しいです。 (2020年1月11日 18時) (レス) id: bfebdd5928 (このIDを非表示/違反報告)
とろ玉うどんに使われてる器 - 凄い面白いです!一気に読んじゃいました!!!玄弥可愛い...!! (2020年1月10日 19時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひな | 作成日時:2020年1月4日 15時

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