及『俺の兄ちゃんについてどう思うか意見を求めたい。』V

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ｰｰ烏養sideｰｰ



今から戻ります、とAから連絡があってもう暫く経った



遅いなぁとふと体育館の外を覗いてみれば、携帯を握りしめ静かに立っているAを視界に捕える




烏「A！
お前戻ってたのか、お疲れ！！」




そう体育館の中から声をかければ、強ばった顔で一瞬こちらを見た


が、すぐに笑顔に戻る


いつも通りのコイツがよくする作り笑い




貴「あー、お疲れ様です
…今戻ったんで、着替えてすぐ行きますね
まだ自主練してますよね？」


烏「え、あぁ、してる、けど…」




その笑顔のどこかが変な気がして、

部屋に向かって歩いていくAを追いかけて咄嗟に腕を掴む



貴「え、っと…どうかしました？烏養さん」




ヘラッと笑う




烏「……お前、なんかあった？」




そう聞くと、Aは笑ったまま答える




貴「何もないっすよ、別に」







ああ、そうかこの笑顔、昔見たことある


ビジネスの作り笑いでも愛想笑いでもなく、感情を押し殺して貼り付けた笑顔だ





烏「嘘だな」


貴「…いや、何もないって言ってるでしょ
ほら俺着替えないとなんないんで離してくださいよ」




温度のない笑顔でニコニコと笑うA




烏「無理だな、お前が正直に言うまで絶対離さん」


貴「…正直に言うも何も、話すことなんて無いんで。
俺の事好きなのは分かりますけどしつこい男は嫌われますよ烏養さん
ちょっと着替えに行くくらい我慢できないんですか」


烏「はァん？
お前のそのヘッタクソで不細工な笑顔が気になるっつってんだろ」


貴「こんなイケメン捕まえて何言ってんすか、目ェ腐ってんじゃないですか？」




頑固と頑固の攻防戦



軽口を叩いてはいるものの、俺が掴んだAの腕には力が入りっぱなしだ




貴「いい加減離してくださいよ」


烏「お前がちゃんとあった事話したらな」


貴「っ、」



気が付けば俺達の言い合いになんだなんだと部員達が様子を見ている




その時、俺の手がバシッと振り払われた





貴「るっさいな、
何もないって言ってるでしょ…！！」





剥がれた仮面の下からでてきた表情は怒っているような、しかし今にも崩れて泣いてしまいそうな、そんな表情だった







貴「……俺着替えてきますね」






一瞬剥がれた仮面ももうすぐに笑顔で取り繕われる



手、すみません。と一言謝ったあと部屋へ戻っていくAの後ろ姿を引き止めることなく見送った








烏「…何にもないわけないだろ」

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