彼が死んだ日 (ページ1)

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雲ページ1

彼が死んだ。

雲みたいに消えていった。

普段から物静かで、影みたいな存在だったけど

こんなにさらっとお別れが来るとは思っていなかった。

彼女という立場は残酷だ。

彼のご両親は私を嫌っていたから、葬式にも行けなかった。

「うちの息子に近づかないで。気味が悪い」

初めて彼の家を訪れたときはそう言われた。
彼は眉を8の字にして、ごめんなって寂しそうに私の頭を撫でてくれた。
私はあいにく可愛くないもので、別に大丈夫、と呟いて悲しげ彼の目を見つめ直した。

私は確かに気味が悪いと思う。
髪は肩くらいでぼさぼさ、結ぶのが面倒くさいから放置してる。
スカートの折り目は後が消えてぼろぼろ。
黒縁の眼鏡のレンズは牛乳瓶の底くらい太い。

なんて変なやつなんだろう。気持ち悪い。

そう思われたくて私は生きている。
誰とも関わりたくなかったから。
もう私は人と関わらないって決めていたから。

なのに彼は私をひと目見て、好きです、と顔を真っ赤に染めて告白してきた。

何なのこの人、意味わかんないとおもった。

背がすらっと高くて、世間的なイケメン。運動に勉強もできて、冗談もノリも通じる。
女子にモテモテで、対応が優しい。

隣のクラスの美音とできてるって噂だったのに。