sweet smell shop －Ⅱ－ (ページ22)

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～過去～

俺は、小さいパン屋を経営していた両親から生まれた一人息子だった。

どこにでもいる一般的な家庭で、不自由はなかった。

でも、家の近くに人気なパン屋が移転してきてから、俺たち家族の人生は変わった。

人の流れは全て奪われ、1日に1人も客が来ない日なんてざらにあった。

そうなると、自然に赤字が増えていくわけで。

両親の仲が悪くなっていくのが小学生の俺でも見てわかった。

｢これからどうしていけばいいのよ…。｣

｢またチラシでも作って配れば…｣

｢そんなの意味ないわよ！しかも、そのチラシ誰が作るっていうの！？それにもお金はかかるのよ？｣

｢そうだよな…。｣

｢蓮の学費だってこれからたくさんかかるだろうし…。｣

｢やっぱりああするしか…。｣

この時はまだ良かった。

・
それから半年経ったころ、事件は起きた。

｢…蓮、これから2人で過ごしていくことになるわ。｣

目｢え…？どういうこと？｣

｢ごめんね…私たちのせいで…ほんとにごめんね…｣

目｢ちょ、母さん！どうして…。｣

母親は、泣き崩れながらずっと俺に謝ってきた。

あとから聞いたところ、父親は闇金に手を出しており、膨大な借金を抱えていたらしい。

でも、父親はそれを母親にも俺にも話さず、どんどん借金が増えていき、結果返せなくなってしまった。

そしてついに、父親は『ごめんな。幸せになれよ。』と書き残し、消えてしまったのだ、と。