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ジーッと見つめ続ける3人に怖くなったAが、ヴィルの後ろに隠れたことにより自分たちが怖がらせてしまったのだと少しばかり申し訳なく思った。
アズールはコホン、と一つ咳払いをするとオクタヴィネル寮への道を案内し始める。
と言っても、鏡を通ってしまえばすぐ着くんだけど、とフロイドが説明しながら手招きで鏡の方へとAを導く。
ヴィルは全く動かないAが、まだ自身の背中から出たくないのだと読み取った。
ゆっくりとヴィルがフロイド達のいるオクタヴィネルに通じる鏡へと歩みを進めると、後ろにいるAも同じ速さでついてきた。
「さぁ、どうぞ?」
ジェイドが鏡へ入る様に促せば、Aはヴィルの背中から離れて恐る恐る自身の身体を鏡へと通した。
――少し、こわい。
恐怖のあまり通るときに目をギュツと閉じてしまったA。
鏡の奥はすぐ寮だと聞いていたが、きつく閉じた瞼を開けるタイミングが分からなかった。
後から来た他の4人が、Aの反応が無い事に気付くと少し慌てていた。(主にヴィルが)
眉間に皴が入るまでグッと瞳を閉じるAの姿を見た一同は、心臓に矢が刺さったかのような感覚を覚える。ズッキューンとでもいうような陳腐な効果音が聞こえるような気さえした。
ヴィルは「うちの子が可愛いわ」と娘を愛でるような表情でAを見ている。
恐怖のあまり目を閉じるAの反応が予想外だったジェイドとアズールは、同い年の女の子だというのにまるで幼子が愛らしい行動をした時のような可愛いものを見る感じであった。
フロイドはこんな反応するAが面白かったのか滅茶苦茶笑っていた。
目の前が真っ暗なAからしたら、急に聞こえてきたフロイドの笑い声に少し驚き肩を揺らす。
「あー、笑ったぁ。…そろそろ目、開けてみたらぁ?」
「ふふっ…そうですよ。大丈夫です、何も怖い事なんてありませんから」
笑い疲れたフロイドとジェイドが目を開く様に促すと、Aは意を決してゆっくりと瞳を開いた。
そこに広がる景色に思わず目を見開く。
視界いっぱいに入る青色と色とりどりの魚たちに懐かしさを覚えるA。
バラバラの速さで泳ぐ沢山の魚たちがキラキラと輝いて見え、これではまるで海の中の様だとAは感動した。
ふと、Aは服で隠れて見えない首を手で触る。そこにある感触は変わらずで…余計なことは考えるのをやめるように寮をぐるりと見まわし、目に映る景色を脳裏に焼き付けるのに専念していた。
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おひつじ(プロフ) - 百華夜さん» コメント有り難う御座います。今後の話で出す予定なので楽しみに待っていて下さいね!作者が社畜故、更新が遅いですが気長に待っていただけると嬉しいです…! (2022年11月30日 23時) (レス) id: cb4f368955 (このIDを非表示/違反報告)
百華夜 - 初コメ失礼します、この小説、スッごく面白くて好きです。あの方が誰なのか、ヴィルさんは何処で夢主と知り合ったのかが凄く気になります。更新、頑張って下さい、応援しています。 (2022年11月23日 16時) (レス) @page10 id: a48955bec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おひつじ | 作成日時:2022年11月18日 12時