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数分後。戻ってきたAの手に持つお盆の上に、一つのグラスが。透明な容器から緑色の飲み物である事が読み取れる。
持ってきたグラスをヴィルの前、テーブルに置くとAは普段白い頬をほんのり赤く染めながら、Aが自分で作ったスムージーである事をヴィルに告げた。
「…!これを、A…が?」
「うん。ヴィルちゃん、普段口にするものにこだわりがあるから。野菜とフルーツを使ってスムージー作ったの。料理…っていうにはあまりにも簡単なものだけど…」
「…馬鹿ね。とっても嬉しいに決まってるじゃない…!あの人の所では料理なんてさせて貰えなかったでしょうから、コレが初めてね」
ヴィルは余りにもAを溺愛するとある人の事が頭に過った。
自分で料理をすればダークマターしか生成しないくせに、Aが料理をやってみたいと申し出た時は、やれ包丁が危ない。火が危ないと言って一切料理を教えなかったし、手伝わせなかった。今この場にいたなら、Aに怪我は無いかと煩く質問攻めにすること間違い無し。
ヴィルは、そんなAが初めて作ったお手製のスムージーを一口飲む。
普段ヴィルが自分で作るスムージーに比べれば、明らかに味は下。けれども、Aが丹精込めて作った。という事実だけで、何倍にも美味しく感じてしまうのは、ヴィルがAの事が凄まじく好きだという証であった。
「美味しいわ、ありがとう」
「ううん。ヴィルちゃんにはいつもお世話になってるから」
そんな二人の間には誰にも見えない筈の、確かな絆が見えた気がするのだ。
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遠くから、ジュゴンちゃんとベタちゃん先輩の姿を眺める。最近では、自分達にも慣れたのか、多少の笑顔を見せてくれるようになった。が、やっぱりベタちゃん先輩といる時のような、満開の笑顔ではない。オレとジェイドのように、互いがちゃんと分かっているって感じのあの二人を見てると、少しイラついて。
それを隣にいるジェイドに言ったら、オレと似た顔でクスクス笑いながら「おやおや。フロイドもやきもちですか?」なんて。
…やきもち?オレが?
「…あは。これがやきもち…ねぇ?てか、゙も゙ってことはジェイドもやきもちじゃん」
「バレてしまいましたか」
「隠す気ないくせに」
「ふふっ」
まだまだ時間はたっぷりある。これからベタちゃん先輩を超えるような関係を築いたらいい。
…だから、覚悟して待っててよ。
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おひつじ(プロフ) - 百華夜さん» コメント有り難う御座います。今後の話で出す予定なので楽しみに待っていて下さいね!作者が社畜故、更新が遅いですが気長に待っていただけると嬉しいです…! (2022年11月30日 23時) (レス) id: cb4f368955 (このIDを非表示/違反報告)
百華夜 - 初コメ失礼します、この小説、スッごく面白くて好きです。あの方が誰なのか、ヴィルさんは何処で夢主と知り合ったのかが凄く気になります。更新、頑張って下さい、応援しています。 (2022年11月23日 16時) (レス) @page10 id: a48955bec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おひつじ | 作成日時:2022年11月18日 12時