29.ラブアフェア ページ30
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＊「あらっ、そんなオシャレしてどこ行くの」
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ふと、歩いてたらご近所のオバさんに話しかけられた。
コツコツと靴を鳴らしながら歩くと、夜空に見るからに綺麗すぎる大輪の花が咲き誇る。
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「夏祭りです、夏祭り」
＊「へえ！アンタそんな相手いたの！」
「実は。数年前からいたんですけど」
＊「へええ」
「会えるかも分かんないんですけどね」
＊「あら！そうなのかい」
「一か八かの賭けで、夏祭り行ってみようかなって」
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はは……って笑うと、オバさんがそうかいそうかい！って笑って
「きっとすっごい好きなんだろうね」って笑うから、それに合わせて自分でも驚くぐらい笑顔を作る。
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「情けない話、自分の気持ちを気付かせてくれた人なんです」
＊「へえへえ」
「でも自信がなくて、自分の気持ち抑えるために一旦この町離れて」
＊「そうなのかい」
「ええ。あの人をしっかり守れるようになったら。自分に自信がついたら、戻って来ようって」
＊「戻ってきたんだね？」
「……はい」
＊「なら、早く行っといで」
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＊「大事な人なんだろ？」
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ーーー……『先生、好きって知ってます？』
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ふっ……と目を閉じると、ハチャメチャなある子が笑ってる。
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『好きです！大っ好きです！』
『付き合ってくださいー！』
『どこへでも行っちゃえ！！』
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ふっ…と今度は口元が緩むのが分かる。
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「……はい。」
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智「ものすごく大好きで大事な女の子なんです」
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夏祭りに行ったら、君はいるだろうか。
いなくても、いいよ。俺毎年行っちゃるから。
あの砂浜のど真ん中で。制服とジャージ姿で並んでいた、あそこにスーツで一人で座ってるから。
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そう決意した俺の車のキーには
すっかり色褪せてしまった男の子ペンギンのハートの片割れが海の波と共にゆらゆら揺れていた。
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fin.
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