24.忘れるってことはどういうこと ページ25
.
.
「な……に……それ」
.
.
忘れな？忘れなってなに。忘れなって。
.
.
夏の風が、薫った。
.
.
「…っ、忘れられるわけないでしょ！？」
智「えっ、ちょっ」
「こんなに好きなんだから、いくら思い出に出来たとしても忘れられるわけないじゃん！」
智「Aっ、ちょ」
「私の気持ちバカにしないでくださいっ……！」
.
「北海道でも沖縄でもロサンゼルスでも南極でもどこにでも行っちゃえ！！！」
.
.
最悪。
.
.
せっかくもらったペンギンさえ、投げつけた私、最悪。
ぽいっ！って思い切り先生に投げつけると、先生はビックリした様子で私はそのまんまズンズン歩きを進める。
先生は追いかけて来なかった。
.
.
智「南極って……」
.
.
だって、悔しかった。
あんなに好き好きって言ったのに。全部中途半端な子供の戯言だって思ってたってことでしょう？
私はこんなに好きなのに。
.
.
スタスタ、と歩いて行くとどんどんどんどん先生との思い出が走馬灯のように駆け巡った。
.
初めて会った時のこと。
朝の体育館裏で恋に落ちたこと。
おしるこを飲んだこと。
毎日好き！と言ったこと。
毎日はいはいってあしらわれたこと。
先生のジャージ姿。
ガリガリくんは先生はソーダ味しか食べないこと。
頭をグリグリされたこと。
水族館に行ったこと。
先生の助手席に乗れたこと。
先生に助けてもらったこと。
先生の服に鼻水をつけてしまったこと。
先生の過去を教えてもらえたこと。
体育教員室のクーラーは絶対27度設定なこと。
男子にも好かれてる先生が好きなこと。
グラウンドを駆けてる先生が、ものすごい好きなこと。
私の名前を呼んでくれたこと。
.
.
その一つ一つが、涙の雫となって思い出と共にぽたり……、ぽたり。と雨を降らせていった。
先生にもう会えない。あの笑顔に会えない。あの手で頭を撫でられることもない。
.
なんであんなことしちゃったんだろう。
.
.
「……っく、……っうわぁぁぁん」
.
.
声を上げて泣かないと、気が晴れなかった。
歩きながら、制服姿で大泣きする女。
.
とんだバカだ。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3079人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
