09.私にも出来たんだ、秘密。 ページ10
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「…寝てるし。」
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パタン…。と自室の扉を閉めて、ベッドの方へ目を向けると
そこには無防備に寝顔を見せてスヤスヤと寝息を立てている、雅紀くんがいた。
そんな雅紀くんの手の中には、私がいつか大好きだと言った少女マンガ。…何を見てんだ、この人は。
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「…、風邪引くよ」
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何だろう。この世の中にはなんか方程式が存在してるんだろうか。
たとえば。たとえば
“負の連鎖が起こる法則”とか。
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パサ…、と雅紀くんの大きいけれど小さい体に掛け布団をかけると
「んーー」って雅紀くんが寝返りを打つ。
私はベッドの脇に座り込んで、雅紀くんの顔をまじまじと見つめる。…顔が小さい。
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(睫毛長い…)
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昔から思ってたけど、雅紀くんって中性的な顔してるよなぁ、なんて思いながら
少しだけ笑みをこぼして、雅紀くんの寝顔を見つめていると。
…いると。
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雅紀「…ーー…、A…」
「…！」
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むにゃむにゃ、と口を動かしながら言ったのはタイミングが良すぎる寝言。
幸せそうな顔して、なんだよこの人は。
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「〜〜〜〜〜っ…」
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なんだよ、なんだよ余命僅かって。だって普通じゃん。雅紀くんは私に言ってこないしさ。
雅紀くん、私が知ってるなんて夢にも思ってないんでしょ。そうなんでしょ。
強がんないでよ。私子供だけど。
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雅紀くんが思ってるより、私は子供じゃないよ。
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ーーー母『お父さんね、栄転が決まったの』
『…え』
母『急な話なんだけど、一週間後には東京！東京にお引越しなの！都会よ、Aも住みたいって言ってたわよね』
『あ…、…うん』
父『あんまり栄転言うな、恥ずかしい』
『はは…(笑)』
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「雅紀くん……」
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うう、ってベッドのシーツに顔を埋めて声を押し殺して涙をこぼす。
それはまるで雨の雫のような。
ああ、でも。雨上がりは虹はでるけど、涙が止まった後は虹なんか出ない。
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こんな雅紀くんを残して、東京。ふざけないでよ。
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この夜、私の中にも雅紀くんには言えない「秘密」が出来た。
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