07.犬のポチ ページ8
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てくてく、と夕焼けを背中に私はいつもの家路を辿っていた。
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私がこの前見た、あの着信相手の表示はこの街の大病院だった。
雅紀くんは風邪を引いたとしても、近くの昔からのおじいさんの病院に行くし、それ以外だって。
雅紀くんがあの大病院を選ぶ、ってことは何かしら重いものが彼の中にあるってことだ。
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櫻井先生も、知ってた。
って言うことはーーー…冗談じゃない。
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余命僅かなんてのは知らなかった。ただ大病院だから、どこか悪いんだってことは想像してた。
でも、余命僅かって。ナニ。
私、そんなの知らない。
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夕暮れのアスファルトに、長い長い私の影が出来ていた。
よく昔、影踏みをしながら雅紀くんと遊んでた。雅紀くんは身体が大きいから影を踏みやすかった。
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「ーーー…」
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人って、本当に悲しい時って涙出ないんだ。そっか。初めて知ったぞ。
世界が色を失くしたみたいにモノクロ世界。でも夕暮れのオレンジ色は何故かわかる。
不思議だ。
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そんな影を追いかけながら、いつかの電柱の前までやって来ると
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陽菜「あ！Aちゃん」
雅紀「あ。おかえり、A」
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雅紀くんの家の前で、犬を連れている雅紀くんの彼女さんの陽菜ちゃんと
そんな犬と戯れてる雅紀くんがいた。
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何故だか、視界がぼやけた。
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「陽菜ちゃん。来てたんですね」
陽菜「ううん、たまたま通り過ぎただけなの。ポチのお散歩コースだしね」
「あ、そうなんですか？」
陽菜「そうそう。…って言うか、雅紀はなんでAちゃんより早く帰ってるの(笑)」
雅紀「車で帰ってきたからですうー。今日は残業なかったんですぅー」
陽菜「うわー、うざい(笑)」
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ねえ、Aちゃん。
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陽菜ちゃんは名前通り、陽の光のように笑うものすごい優しい人。
雅紀くんは太陽のように笑う人。とってもお似合いの二人だ。
陽菜ちゃんは雅紀くんが教師になりたての頃からの彼女さんで、私のことも妹のように優しくしてくれる。
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ーーー…陽菜ちゃんは、知っているのだろうか。
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雅紀くんの、秘密。
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