11.時よ止まれ、ずっと止まれ ページ12
.
.
「あ…雅紀く、……相葉先生」
雅紀「くふふ、今他の人いないから雅紀くんでいーのに。はい、手」
.
.
雅紀くんは顔をくしゃくしゃにして笑うと、地面に尻餅をついている私に手を差し伸べて
私はその手を掴む。するとグイって軽々しく私を引っ張り上げた。……男の人、だ。
.
.
雅紀「なに？Aのクラスなにすんの？こんなダンボール集めて」
.
雅紀くんは笑いながら散らばったダンボールを拾って、手にするとそのままスタスタと先を行ってしまう。
…これは、教室までダンボールを持って行ってくれるってことだ。
.
.
「お、お化け屋敷！……みたい」
雅紀「みたい、って。Aはなにすんの？お化け役？」
「わかんない…」
雅紀「わかんないって！関心なさすぎでしょ、文化祭に！(笑)」
.
くはは、って笑いながら器用に螺旋階段を上っていく雅紀くんは私がダンボールのせいで視界が遮られてたなんて思えないぐらい
背が高くて、楽々と歩いて行った。私はそんな雅紀くんの横を歩いて、笑顔を見せる。
.
今この瞬間が、愛おしい。
.
.
「雅紀くん、お化け屋敷来てよ」
雅紀「うん、行く行く！Aお化け役してね」
「多分大抵はお化け役だから、やると思うよ」
雅紀「楽しみにしてるー」
.
.
雅紀くんはにこやかに笑って、非常口の扉を開けて廊下に入ると
すぐ近くにある私の教室の前にダンボールをおいて、「じゃあね」って手をひらひら振って去っていく。
雅紀くんは3-Bの担任だ。河瀬ちゃんのクラスの。
.
私も雅紀くんのクラスが良かったな。
.
.
そんな風に思いながら、遠ざかっていく背中をただただ眺める。
.
.
胸が痛い。苦しい。涙が出る。
あと一週間であの背中が見れなくなる。声が聞こえなくなる。それを雅紀くんは知らない。
お母さんに頼んでおいた。「雅紀くんには言わないでおいて」って。
そしたらお母さんは分からなさそうだったけど、うん、と言ってくれた。
.
雅紀くんが私に秘密を作るなら、私だって雅紀くんに秘密を作る。
.
.
リホ「あ、ダンボール持ってきた？」
「うん」
.
.
それぐらい、いいでしょう？
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3891人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
