32.叫ぶ喚く、俺の声…side J ページ33
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彼女が俺の義理の兄妹だということを知ったのは、本当に唐突なこと。
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生徒も部活に入ってる奴ら以外、帰宅したそんな夜。
溜まってた仕事を終えて、職員室へ行こうと薄暗い廊下を歩いていた時。
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ふと、ひとつの教室から溢れてくる灯り。
あれ、まだ誰かいんのか…。と思ったら
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潤『ーーーー…』
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新しくやってきた、ニノの代理の教師。つまり彼女の新しい担任と
いつかいなくなった俺の母親が何故か談話をしていた。
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なんでーーー…と口を開きたかった。
開かなかった。
開けなかった。
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＊『娘さんは出席日数ギリギリでして』
○『Aがですか…卒業は出来るんでしょうか』
＊『ええ。まだ警告、という形なので…』
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娘。
A。
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何かを考えようとしたわけじゃない。何も考えず、思い切り職員室へと走った。
慌てて伊藤Aの書類を探して、続柄母という欄を見ると確かにそこには俺の母親の名前が書いていて
それは俺を捨てた女が、伊藤の母親になっていたことを物語る唯一の術だった。
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目の前が真っ暗になった。
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一気に彼女への思いが溢れかえる。
Aのことは好き。好きだけど母親が尾びれを引く。
君は悪くない。悪いのは激しさを隠せない俺の方。
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君は俺を好きだと言う。
でも俺は俺もだと言えない。
君は泣く。
俺は叫ぶ。
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このまま彼女のそばにいたら彼女が壊れてしまうのではないか。
ーーー…そんなの、ただの言い訳だ。
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結局は自分が壊れるのが怖かったんだ。
彼女を好きになって、彼女を自分の鋭い凶器のような感情で傷つけてしまうのが本当に怖かった。
俺たちを捨てた女が大事にしてる子供。
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そんな醜い感情が、純粋な好意を侵食していく。
わざと傷つけて、泣かせたりもした。そのまま傷ついて立ち直れなくなればいいとも思った。
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ーーー…でも。
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『先生！』
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俺には彼女の手を振り解く事はできず。
俺がとった最終手段は
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潤『俺は君を生徒でしか見てないし、これからも生徒として接する』
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嘘をつく、ということだった。
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