※ ページ39
太宰治
「……駄目だよ。君の居場所は此処じゃない筈だ。…帰りなさい、お莫迦さん」
夕暮れ時、彼はいつもと違う河辺に佇んでいました。いつもと違うのは場所だけではありません。普段であれば迷わず飛び込んでいる河に、今日は彼は流れていません。ただ淋しそうな顔をして…その瞳に、夕陽の朱を湛え流れる河の水面を映していました。
病院を抜け出し、一日中街を駆け回って漸く見つけたそんな彼の横顔。貴女は泣きそうになりながら彼の背中を抱き締めました。彼の腹に回された貴女の手に大事そうに触れながら、それでも彼はその手を自分から引き剥がして云いました。
もうこれ以上、貴女を傷つけるわけにはいかないから。自分など居なくとも、貴女は幸せに成れるのだと信じているから。
そっと貴女を振り返った彼の、夕陽の逆光の中で貴女を映して揺れている瞳。いつも通りにふわりと上げられる口角は、果たして彼の本心足り得るのでしょうか。
『莫迦は、貴方の方でしょう』
「嗚呼...そうだね。君一人さえ護れなかった」
『そうじゃない。そうじゃ、ないでしょ......』
...燃ゆる水面がとうとう黒に染まる頃、幻は貴女の手の中に落ち、確かな熱に成りました。もう二度と逃げさせはしませんね。
中原中也
「来るな…来るんじゃねェよ…」
『中也！』
漸く彼を見つけた貴女が走り寄ろうとすると、彼は喉の奥から絞り出すような苦々しげな声でそれを止めました。泣き出しそうな顔で云った彼に、貴女は思わず足を止めて仕舞いました。それでも、走る気持ちは止まってはくれません。貴女の気持ちも、勿論、彼の気持ちも。
彼の、貴女と永遠に離れる覚悟は打ち砕かれる寸前です。全てが決壊するまで、あと少し。最後の決断を下すのは貴女です。
貴女は本能の赴く儘に、再び足を進めますか？それが仮令、彼の覚悟を踏み躙ることになろうとも。その先に、どんな修羅の道が待ち受けていようとも...＿＿＿。
ーーー
とんでもなく遅くなりまして本当に申し訳ありません...。
半年弱待たせて仕舞いました...。
普段大人しい貴女が実はバキバキのシックスパックだと…→←貴女が彼を探し出して再会すると…
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 285人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
D night(プロフ) - 月華さん» こちらこそ長い間お待たせしてしまったにも関わらず素敵な感想をありがとうございます…！確かに笑！あの猫には芥川さんの血が入ってるかもしれませんね…。芥川｢僕は猫ではない。それに、僕は太宰さんに対してあのようなはしたない真似はせぬ｣ (8月22日 23時) (
レス) id: 4cc2763b45 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - D nightさん» リクエストの一つをありがとうございました！猫カフェで敦君、芥川さん、中也さんが猫に好かれ、楽しんでる姿が見てて和み、太宰さんは猫に拒否されてる姿が面白かったです！でも、一匹の猫が太宰さんに懐くとは、もしや、芥川さんみたいな猫…！？ (8月22日 14時) (レス) id: 216fbd3da5 (このIDを非表示/違反報告)
D night(プロフ) - 夢主の名前表記までミスってた！！！芥川さんに名前呼ばれたかった方々ほんとごめんなさいの気持ち… (8月21日 0時) (レス) id: 4cc2763b45 (このIDを非表示/違反報告)
D night(プロフ) - たった今2ヶ月前の失態に気づいた。名前…名前の表記…なんでフルネームじゃないのッ！？いつの間に呼び捨てみたいになってたの！？恥ずかしい！！ (8月21日 0時) (レス) @page46 id: 4cc2763b45 (このIDを非表示/違反報告)
D night(プロフ) - クリスタルパワーさん» こちらこそリクエストありがとうございました！！次のリクエスト、承りました。こんな気まぐれ更新の作品をご愛読いただいてほんとにありがとうございます😖❤️ (6月11日 23時) (レス) id: 4cc2763b45 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：D night | 作成日時：2021年3月18日 21時
