１０ ページ10
――放課後――
「あ、時間…！」
「ん？あー、書類書くんだっけ？篠原くんと」
「うん、急がなくちゃ。待たせちゃう」
「学園の王子と図書館デートね」
「ち、違うよ！そんなんじゃなくて、篠原くんは 私のことを手伝ってくれるだけだよ！」
「向こうは喜んでたじゃん、百瀬さんと放課後に会えるって」
「な、なんでその話知ってるの…？！」
「なりゆき」
楽しそうに、それこそ悪魔の笑顔を浮かべながら 記録ノートを書く雪音。
頬の熱が上がるのを感じながら バッグを持ち上げると、１時間ごとの水分補給に来た選手たちが走り寄ってくる。
「あれ、菜々子先輩どこか行くんですか？」
サッカー部の後輩選手が そう話しかけてくる。
「うん、書類を書かなきゃいけないの。これから一週間。ごめんね、途中で抜けちゃって」
「えー！サッカー部の天使が…！」
「私はいるけど？」
「雪音先輩は天使というより悪魔というか」
「佐藤には差し入れのチョコ無し」
「雪音お姉さま！」
２人の変なやり取りを見て、くすくす笑う。
と。
「菜々子」
後ろから声をかけられ、振り向く。
「梓くん、お疲れさま！チョコあるよ〜」
「あ、うん…。ありがと」
チョコを一欠取り、口に頬りこむ梓くん。
いつになく考え込んでいるかのような表情…。
どうしたのかな、何か悩み事でもあるのかな。
「どうしたの、キャプテン！顔が暗いよ？」
「うん…」
「…？あず、さ…くん？」
私のことをじっと見つめ、私の手を取る。
ぎゅ、と少し強めに握られた手。
「…どうしたの？具合、悪い？」
「…あ、いや…」
「…？」
と。
「西海！」
「うわっ」
どん、と梓くんの後ろからとびかかってくる男の子。
梓くんと一番仲良しな 相楽大輔(さがら だいすけ)くん。
「なんだよ、大輔…！」
「お前が浮かねー顔してっからだろー？菜々子ちゃんに心配かけんなよ」
「…」
「梓くん、本当に大丈夫？」
「あ、うん…」
「そっか…。あ、私、そろそろ行かなくちゃ！」
「え」
するり、と梓くんの手から 自分のそれを抜き、カバンを肩にかけなおす。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃーーーーーーい！」
皆の声を聴き、そのまま図書館までダッシュ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：向日葵 | 作成日時：2016年2月3日 10時
