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「ま…って!!!」









切れる息も構わず、その後ろ姿を追う。


呼びかけると、篠原くんは くるりと振り向き にこ、と笑う。









「百瀬さん」


「あ…、あの、さっき」


「ん?」







さっきの傷ついた顔なんて影も見せず、にこにこと笑う篠原くん。


それが余計に胸を苦しめて、思わず 胸のジャージを握る。









「無視、して…ごめんなさ、い」


「どうして謝るの?」


「え?」


「百瀬さんは、部活の仕事やってただけだよ。急に声かけてごめんね。邪魔しちゃったかな」









心配いらないよ、自分は大丈夫。



そう言うように、安心させるように笑顔を浮かべてる。







気まずいから。


そんな理由で篠原くんを無視した自分が恥ずかしい。







こんなに、他人想いな人を傷つけてしまうなんて。









「ご、ごめんなさい、本当に…!」


「大丈夫だよ、そんなに謝らないで!俺のほうこそ、大声で名前呼ん…で…って、」









ぼたぼた、と



涙があふれて止まらない。





篠原くんへの罪悪感、自分への嫌悪感。




私だったら、無視されたら悲しくなる。

篠原くんだって、そのはずなのに。









「…百瀬さん、こっち来て?」









くい、と腕を ガラスでも扱うのかと疑うくらい優しく引かれる。


そのままついていった先は、グラウンドからほど近い ベンチ。


すとん、とそこに座らされ、「ちょっと待っててね」と言われる。





―――――――


――――――――――









「お待たせ」









顔を上げれば、そこにはミルクティーの紙パックをもって優しく微笑む篠原くん。









「え、あ、これ…」


「飲んで、俺が勝手に買ってきちゃっただけだから」


「あ、ありがとう…。あ、お金!」


「ふふ、なにそれ。いいよ、お金なんて」


「よくないよ…?」


「…じゃあ、隣座っていいかな?」









私の表情をうかがうように腰を曲げる。


断る理由もなくて、コクンと頷く。







「やった!」








嬉しそうに、顔をくしゃっとさせる彼。


なんだかその表情が可愛くて、笑ってしまう。









「あ、やっと笑ってくれた」


「…え?」


「俺さ、百瀬さんの笑い方が好きなんだ。なんていうんだろう。優しいっていうか、安心するっていうか…。あったかくって、本当に、好きなんだ」









照れもせず、幸せそうに そんなことを言っていて。


心の奥が、きゅう、とした。

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作者名:向日葵 | 作成日時:2016年2月3日 10時

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