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「(優しいなぁ…)」
バスが動くまで、待っててくれるのかな。
寒くて、鼻赤くなっちゃってる。
それなのに、笑顔で手を振ってくれていて。
「(それに、生徒会の仕事で疲れてるはず、なのに)」
歩く速度だって、私に合わせてくれてた。
歩幅は全然違うのに、私が早歩きにならないようにゆっくり歩いてくれて。
さっきだって、車道側は歩かせてくれなかった。
「(…色んな女の子が好きになる理由、わかるなぁ)」
と。
バスが動き出し、篠原くんも手を振るのをやめる。
「(あれ?)」
窓ガラス越しに見た篠原くんは、バス停に背を向け 歩いて行ってしまった。
「(バス停の奥に家があるって言ってたのに…学校側に戻ってる…)」
夜道が危ないからって、わざわざ送ってくれたの?
遠回りまでして?
そう思うと、胸に 何か温かいものが押し迫ってくる感覚に陥った。
「(……なんだか、)」
篠原くんに会ってから、心が きゅうってする回数が増えたなぁ。
なんて、バカみたいなことを思う バスの中。
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―――――――――――――……
「(寒…)」
マフラーに顔をうずめて、ブレザーのポケットに手を突っ込みながら帰る。
頭の中は、さっきまで一緒だった 百瀬さんのことでいっぱい。
「(遠回りしてでも一緒にいたい、なんて…)」
自分でも恥ずかしくなるくらい溺れてるな、と思う。
でも、手を握ったときの反応、明らかに男として見られてないというか…。
このままだったら、いい友達、なんていうどっちつかずな曖昧な関係になる。
「(俺って こんなに欲のある人間だったっけ)」
はぁ、と吐いたため息は この寒さの中だったら 驚くくらい白くて。
その白さを見ると、自分がどれほど 意地汚い人間かも感じられて。
「(好き、って言う感情は…。
何よりも純粋そうに思えるけど、何よりも汚い。
そんな感じがする)」
人間の、エゴってやつかな。
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作者名:向日葵 | 作成日時:2016年2月3日 10時