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「すみませーん。図書室のカギ閉めるので、出てもらえますかー?」
下の階のから図書室の子にそう呼びかけられる。
急いで応答し、図書室から出る。
「百瀬さん、家近いの?」
「うん、バスで20分だよ!」
「そっか、じゃあバス停まで送るよ」
「えっ、でも篠原くん遠くならない?」
「俺、バス停の奥を行った先に家があるからさ。送らせてほしいな」
「あ、そう、なんだ…。いいの?」
「うん、それに 今日はなんだかお詫びしたい気分だし」
「お詫びなんていいのに」
「させて、お願い」
困ったように笑う篠原くん。
断る理由もないから、首を縦に振ると嬉しそうに笑ってくれる。
「じゃあ、帰ろうか」
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―――――――――――…………
「わ、寒いね…」
「わ、私、冷え性だから、死にそう」
「えっ、大丈夫?」
「感覚ない…」
バス停について、バスを待つ私たち。
その場しのぎで100均で買った手袋は あっけなく穴が開き、今は素手で登下校。
まぁこれはこれで 風が来ても 寒いなんて感覚ないから むしろ平気だけど。
と。
「わ、ほんとに冷たい。氷みたいだよ」
すい、と手を篠原くんに優しく掴まれ、両手であたためてくれる。
じんわりと熱が伝わってきて、なんだか安心する…。
「あ、ご、ごめん。いきなり、触って」
ぱ、と手を離され、冷たい空気にさらされた私の手は すぐに冷たくなっていく。
「なんで?篠原くんの手、凄く温かくて安心したよ!」
「っ、」
「旭くんて名前、ぴったりだね。笑顔も、手も、篠原くんは全部あったかい」
そう言うと、篠原くんの顔はじわりと赤くなっていく。
「そ、うかな…」
「うん!」
「…百瀬さんにそう思ってもらえて、嬉しいよ」
マフラーに顔を埋めて、嬉しそうに笑う。
つられて私も笑う。
男の子といるのに、女の子と一緒にいるみたいな感覚。
楽っていうか、楽しいっていうか。
「…あ、バス」
気が付くと、バスが来ていて プシューと音を鳴らして扉が開く。
「じゃあ、篠原くん また明日ね」
「うん、また明日」
ふわ、と。
篠原くんが笑う。
それを見届けてからバスに乗り、窓を見ると 笑顔で手を振ってくれる篠原くんがいた。
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作者名:向日葵 | 作成日時:2016年2月3日 10時