しるし ページ5
上着のポケットにしまいこんでたアラームつきの腕時計が鳴った
社長室を出るとき
東山社長から唯一持たされたものだった
時間は夜の12時
オレとAのタイムリミットがきた
A「12時の鐘で帰るシンデレラみたいだね…w
「ほんとだ…wでも帰るのはオレだから
シンデレラボーイかな？w」
A「フフ…w
「フハハ…w
なんかおかしくて笑っちゃう
でもこれで良かったのかもな
これで最後は笑顔で終われそう…
「ーーハァ…おもしろい…w
ーーよし…じゃぁ、A先に戻ってて…？
じゃないとオレまた気が変わっちゃうからさ」
言いながら
ベンチに座ってる彼女をゆっくり立ち上がらせた
A「貴久……。うん…」
オレの腕の上に乗せてる彼女の手が離れなくなればいいのに…
そんな幼稚な考えが浮かぶくらい
彼女の手は暖かくて
愛おしくて
哀しかった
でもこれで本当に終わり
屋上出口の扉まで一緒に歩いて
そばまできたとき
もう一度強く抱き合って
初めての時のような
優しくて甘い口づけを交わした
ーーガチャ…
ゆっくり扉を開ける
A「東京戻っても…頑張ってね…？」
「うん…。Aも、ニューヨークで頑張ってきな…？
なかなか進まないAの背中をそっと扉の中に押した
A「じゃぁ…バイバイ…
「うん…バイバイ…」
…
ーーパタン……
オレとAの間を
扉が虚しく塞いだ
ーー…ドサッ…
一気に力が抜けたように
そのままその場に倒れこんだ
「ふっ…うっ……A……A……っ」
涙が情けないほどぼろぼろでてきて
髪の毛も頭の中もぐちゃぐちゃになって
這うようにそばの植え込みの枝を一本折ると、
一箇所だけ鏡みたいになっている柱に駆け寄った
自分の胸元を開けて
Aのしるし…Aのしるし…
ーーあった！
赤い小さな痣
こんなんじゃすぐに消えて分かんなくなっちゃうじゃん
忘れないようにしなくちゃ
ちゃんとここにあるって
オレはAのものなんだって
握りしめてた枝の先を胸元までもっていって
ーーガッ…ガッ…
ポタ…ポタポタ…
って…ちょっと深くいきすぎたかな…？
でも
これでもう大丈夫…
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作者名：ひまわり | 作成日時：2019年1月8日 0時
