海賊さん、私と世間話しませんか？【シャンクス】 (ページ9)

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8話ページ9

楽しい時間というのはあっという間で

気がつけば日付は変わり

真っ暗だったら空が少し明るくなり始めていた

｢つい話すぎちまったな｣

｢もう少ししたら兵士さんたちが増えてもっと警備が厳しくなると思います。その前にここを離れた方が良いかと…｣

｢あぁ｣

シャンクスさんは椅子から立ち上がり、扉へ向かう

その背中を見ながら胸が少し苦しくなった

もっといろんな話を聞きたい

もっとシャンクスさんのことを知りたい

“もっと”と自分でも驚くほど欲が出てくる

気がつけば身体が勝手に動いていた

｢シャ、シャンクスさん！｣

｢ん？｣

｢あ、あの…｣

また話を聞かせてくれませんか、と言っていいのだろうか

私はここから出ることができない

ということはシャンクスさんにここに来ていただくことになるが、警備兵さんなど危険なことが多すぎる

私のわがままでシャンクスさんを危険に晒すわけにはいかない

引き止めたはいいが、何も言葉が出てこない

しばらく続いた無言を破ったのはシャンクスさんだった

｢なぁ、A｣

｢Aが良ければ今夜も会おう｣

｢え…｣

｢俺が見てきた景色、たくさん話してやる｣

私が言いたかった言葉をまさかシャンクスさんから言われるなんて思っていなかった

｢でもそうなるとシャンクスさんに危険が…｣

｢心配いらねーよ、俺は強いからな！｣

まるで少年のような笑顔で言うシャンクスさんを見て、確かな理由がないのに“大丈夫”と感じてしまった

なら今はその言葉に、優しさに甘えてもいいだろうか

｢シャンクスさん、続きを聞かせてくれますか？｣

｢………あぁ！｣

私の言葉を聞いたシャンクスさんは満足した顔をしてまた扉の方へ向かい、出る直前再びこちらを振り向き目が合う

｢おやすみ｣

｢！！………おやすみなさい、素敵な夢を｣

言い終わって瞬きをしたら、もうそこにシャンクスさんはいなかった

夢のような感覚だったけど、部屋に少し残っているお酒の匂いが彼がいたと伝えていた

私は鼓動が速い胸を抑えながら眠りについた