6話 ページ7
｢今日は綺麗な夜だな、お嬢さん｣
男性らしい力強さもあり、どこか優しさも感じられる声が静かな部屋に響く
｢……私を攫いに来た方ですか？残念だけれど、私を売り飛ばしても大したお金にはなりませんよ｣
自分でもびっくりするほど落ち着いていた
この部屋に屋敷の人以外が来ることなんてないし、知らない男が急に入ってきて驚いているはずなのに
私はこの状況を冷静に受け止めていた
｢売り飛ばす？俺はそんなことしねぇよ。ましてや一国の綺麗なお姫様をな｣
｢違うのですか？ならなぜここに…そもそもどうやってここまで？外には警備兵の人がいるはずですけど…｣
｢あぁそれなら、ちょっと眠ってもらった。殺 したりしてないから安心してくれ｣
私は目の前にいる男性の真意が分からなかった
城内に侵入したことが誰かに知られたりしたらきっと大罪人になってしまう
そんなリスクを背負いながらここに来たというのに、私を売り飛ばしたり攫う気はないらしい
｢あなたの目的はなんですか？｣
｢目的、か…そうだなー…お嬢さんと話をしに？｣
｢………は、話ですか？｣
｢昼間たまたま街で歩いてるお嬢さんの姿を見たんだ。そんときになんか泣いているように見えたんだよ。だから、気になってここに来た｣
｢泣いているって…涙流していませんが…｣
｢確かに涙は流れてなかったが、顔が泣いてたんだよ｣
｢そう、ですか…｣
イマイチ理解できないがこれ以上聞いても私には一生理解できないことなのだろうと感じ、追求するのをやめた
｢……そういうことならこれも何かのご縁ということで、私は第3王女のAと申します｣
ベッドから降りて男性から少し距離を開けて立ち、寝巻きのスカートの裾を少し持ち上げながらお辞儀をした
｢俺はシャンクス、海賊だ｣
｢！！………海賊さんなんですね……｣
｢あぁ｣
私は先程まで読んでいた本の内容を頭の中で思い浮かべながら夢にまで見た生の海賊に興奮して強く拳を握っていた
一旦深呼吸して高ぶる気持ちを落ち着かせ、真っ直ぐシャンクスさんの眼を見ていう
｢………では海賊さん、私と世間話しませんか？｣
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作者名：向日葵 | 作成日時：2023年10月8日 23時
