1話 ページ2
“空に繋がる部屋”
国民は私のいる部屋をそう呼んでいるらしい。
王が住んでいる城で1番高い塔の最上階だから。
｢皆さん、お嬢様に尊敬と憧れを抱いていらっしゃるのですよ｣
メイドさんはそう言っていたけど、
国民は知らないだけ。
その部屋に入った者に自由などなく、
ただ親や兄弟たちの言うことを聞いて、
誰もが望む“理想の王女”でいる生活を送らなければならないことを。
｢おはようございます、A様｣
｢……おはよう｣
｢本日は年に1回の国民を皆さんに元気なお姿を見せる日でございます｣
｢お父様は？｣
｢早朝からお忙しく動いていらっしゃいます｣
年に1回、街に降りて国民とお話をする日。
実は、私にとって数少ない楽しみな日でもある。
｢今日は海の方も周るの？｣
｢その予定でございます｣
｢やった！今日はどんな船が停泊しているかなー｣
私は港に停泊しているさまざまな船を見るのが大好きだ。
大航海時代なんて言われているらしいが、生憎生まれてから今までこの国を出たことがない。
だからこの国以外の、外の世界に強い憧れがある。
船はそんな外の世界を1番、見て感じ取れる物だと私は思う。
｢お嬢様、鑑賞することは結構ですけれどもご自身の立場をお忘れなく｣
｢……分かってるって｣
｢では、お召し換えを。朝食の準備は出来ております｣
ようやくベッドから離れ、メイドさんが着やすいように広げてくれている服の袖に腕を通した
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作者名：向日葵 | 作成日時：2023年10月8日 23時
