私、音柱に拾われました【宇髄天元】

48話 ページ49

思わず手が止まったが、母親の苦しそうな声で現実に引き戻される




今いるここもいつまで安全か分からない




手当てをして一秒でも早くここから離れることが最優先だ




怪我をしているところにクルクルと布を巻いていく





｢うっ………こ、こは……｣





しばらくすると、母親が意識を取り戻した




心の中でホッとしながら手当てを続ける





｢貴方が……アタシを助けてくれたの……？｣




｢今簡単にですが、傷の手当てをしています｣




｢そう……｣





母の反応からしてどうやら私が娘だと気づいていないようだ




最後にあったのはもう何年も前で、私はもっと子供だった




分からなくて当然だ




母親に会うために遊郭へ来たのに、どこか安心している自分がいた





｢これでよしっと……動けますか？｣




｢ええ……ありがとう｣





母親の背中に手を回して立ち上がるのを手伝う




その時、初めてしっかりと目が合った





｢あら？貴方どこかで………会ったことあるかしら…？｣




｢…………いやっ………｣





母親の言葉に酷く動揺する




会いに来たと伝えたらどんな反応をするだろうか、どう思うだろうか




喜んでくれるだろうか




嫌な顔をするだろうか




いや、そもそも私の存在自体覚えていない可能性もある





｢は、早くここから離れましょう。ちょっと外の様子を見てきます｣





早歩きで母親の傍を離れる




今はそんなことよりも安全な場所に行くことを考えなきゃ




外に出ると激しい戦いの音は聞こなかった





｢今なら移動できそう｣





再び母親の元へ戻ろうとした、そのとき




ドンッ！と地面が大きい音を立てて鳴ったと同時にグラグラと揺れ出す




慌てて外をまた見ると、大きな土煙が建物を飲み込みながら物凄い速さでこちらに近づいてきていた





｢まずい！｣





母親の元へ走りあと数歩で着くというところで、土煙はすぐそこまで迫っていた





｢…………-----お母さん！！｣





そう叫んで母親を庇うように上に覆い被さる




私たちは土煙に飲み込まれた




周りから建物が崩れる大きな音がする




瓦礫らしきものが背中を直撃し痛みを感じたが、ひたすら音が止むまで我慢した

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