86回目 ページ36
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少し歩いた先の神社の境内で2人並んで座る。
うっしーがお姉さんに教えてもらったというこの場所は、全く人のいる気配が感じられなかった。
でも花火が近いから、お互いの声は張り上げないと聞こえない。
「あっA、ちょっとじっとしてて」
思い出したようにそう手を伸ばしてきたうっしーに思わず目を瞑る。
少し期待したのは、恋だなんだで頭のおかしくなってる私の悪いところだった。
「はい、もう開けていいよ」
「...あれ、もしかして落としてた?」
触られた頭を確かめると茉白に付けてもらった大きな花の髪飾りが手に触れる。
いつの間にか落としてたらしくうっしーが付け直してくれた。
触られてた部分が熱を持ってる気がしてちら、とうっしーの方を見ても花火に夢中で私の視線に気付く気配はなかった。
特に用もないのに「ねえ」と呼びかけたけど、大きい音にかき消されて届かない。
...だから、今なら何を言ってもきっと聞こえないし、届かないなら言ってないのと変わらない。
今までよりも派手に打ち上がっているたくさんの花火を見つめてから思い出すように目を閉じた。
...無邪気な横顔も、楽しそうな笑い声も、優しく撫でてくれる手も、全部、ぜんぶ。
「...好きだよ」
落ちていったのは最後の花火だった。
ただそれは、私が口を開くのと同時で。
すぐに次の花火が上がるだろうと特に気にしていなかったのが裏目に出たらしい。
彩られた光が全て打ち上がり終わったから、辺りには静寂が広がっていた。
その時に、臆病な私の告白が小さく響いた。
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ユシア(プロフ) - まぁさん» 初めまして!真っ直ぐな感想が一番嬉しいですありがとうごさいます...!他の作品も頑張って書いておりますので楽しんで読んでいただければ幸いです。 (2020年10月31日 20時) (レス) id: fc67472b4e (このIDを非表示/違反報告)
まぁ - 初めまして!語彙力がないので上手く伝えられないのですがすごく面白かったです!あっという間に全部読んでしまいました!先の読めない展開にワクワクしましたし、情景が浮かびました!違う作品も読み漁りたいと思います! (2020年10月30日 23時) (レス) id: c99a2a8fdb (このIDを非表示/違反報告)
ユシア(プロフ) - みづさん» 読んでいただきありがとうございました!この字体とっても素敵ですよね。 みづさんのコメントのお陰でお話が頑張って書けたのでこちらこそ感謝しております。活動の主は占ツクで変わりありませんのでこれからもよろしくお願いしますね。 (2020年8月11日 21時) (レス) id: fc67472b4e (このIDを非表示/違反報告)
みづ(プロフ) - 完結お疲れ様でした!何度もコメント失礼します。まずこの字体からして好きでした。お話ももちろん面白くて、毎回楽しみにしていました!Twitterやってない……残念です……とにかく素敵な作品をありがとうございました!これからも応援してます! (2020年8月11日 21時) (レス) id: 378c3d5b14 (このIDを非表示/違反報告)
ユシア(プロフ) - みづさん» そう言っていただけると本当に嬉しいですありがとうございます!ゆっくりになりますが更新続けていきたいので最後までお付き合いください! (2020年7月4日 20時) (レス) id: fc67472b4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユシア | 作成日時:2020年7月3日 20時