74回目 ページ24
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Aの手を握りながら泣きそうなのを我慢しているうちに、面会時間が終了した。
「...また明日も来るからね、A」
部屋から出る間際にそう話しかけたけど聞こえていたかは分からない。
ただ、届いていればいいなと思った。
「...茉白、今日はもう帰っていいよ」
「...えっ、あ、ごめん...ぼーっとしてた」
次の日の部活にも身が入ってないのは自覚していた。
でも意識はどうしても病院にいるAの方にいってしまう。
...キヨだって心配な筈なのに私だけサボる訳にいかないと思い水道で顔を洗って頭を冷やそうと思ったらキヨに止められた。
「いや、本当に今日はもう仕事ないし...それに、俺もAのこと心配だから見に行ってほしい」
「...ありがとう」
そんな言われ方をしたら行かないわけにいかなくて、キヨの優しさを受け取ってAの元へ向かった。
病室について、またAの手を握った。
「A」と呟きながら手に力を込めて俯く。
そうしているとほんの一瞬、Aの手が動いた気がしてバッと顔をあげる。
Aの目が、ゆっくりと開いた。
「A!?ここがどこか分かる!?」
私の必死な呼びかけにちら、とこっちを見て微笑んだ。
ナースコールを押そうとしたけど、Aの口が開いて思わずすんでのところで止めた。
話したいことがきっとある。
それは今じゃないと話してくれない気がした。
私がナースコールのボタンから手を離すと小さな声が聞こえた。
「...夢を、見たの」
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ユシア(プロフ) - まぁさん» 初めまして!真っ直ぐな感想が一番嬉しいですありがとうごさいます...!他の作品も頑張って書いておりますので楽しんで読んでいただければ幸いです。 (2020年10月31日 20時) (レス) id: fc67472b4e (このIDを非表示/違反報告)
まぁ - 初めまして!語彙力がないので上手く伝えられないのですがすごく面白かったです!あっという間に全部読んでしまいました!先の読めない展開にワクワクしましたし、情景が浮かびました!違う作品も読み漁りたいと思います! (2020年10月30日 23時) (レス) id: c99a2a8fdb (このIDを非表示/違反報告)
ユシア(プロフ) - みづさん» 読んでいただきありがとうございました!この字体とっても素敵ですよね。 みづさんのコメントのお陰でお話が頑張って書けたのでこちらこそ感謝しております。活動の主は占ツクで変わりありませんのでこれからもよろしくお願いしますね。 (2020年8月11日 21時) (レス) id: fc67472b4e (このIDを非表示/違反報告)
みづ(プロフ) - 完結お疲れ様でした!何度もコメント失礼します。まずこの字体からして好きでした。お話ももちろん面白くて、毎回楽しみにしていました!Twitterやってない……残念です……とにかく素敵な作品をありがとうございました!これからも応援してます! (2020年8月11日 21時) (レス) id: 378c3d5b14 (このIDを非表示/違反報告)
ユシア(プロフ) - みづさん» そう言っていただけると本当に嬉しいですありがとうございます!ゆっくりになりますが更新続けていきたいので最後までお付き合いください! (2020年7月4日 20時) (レス) id: fc67472b4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユシア | 作成日時:2020年7月3日 20時