君が何回だって笑うから2【実.況.者】

７０回目 ページ20

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「...Aん家の状況がどんなんか茉白ちゃんも知ってるやろ？」


家の状況、と聞いて真っ先に思いついたのは両親のことだった。
前に、父親は単身赴任で母親は仕事に忙しくほとんど家にいないと言っていた。

そのことだろうな、と思い私が頷くとそれを待っていたようにレトルトが話し出す。


「物心ついたころから両親はあんなんやから、仲良いところなんて見たことないんや。両親がいないせいでしっかりするようになったと思えば余計ほっとかれるようになって...」


Aはしっかりしてるから大丈夫だと思ったんだろうけど、他の子供と変わりないのに。

そう思ってる私に追い打ちをかけるように「やから昔はよく泣いてた」とレトルトが悲しそうに言った。


「...あの子は、愛情を知らないまま育っちゃったのかな」

「そうやな。...一番近い距離にいる人達の愛情に触れずにいるから、未だにその感情を知らんのかもしれん」


レトルトの推測は、多分正解だ。
でも、恋を自覚しない...いや、自覚しようとしない理由をもう1つ思いついていた。


「...恋とか愛が、幸せとは限らない」

「...？」

「両親の姿を見てきたから、結ばれたから幸せを得られるわけじゃないってAが多分一番知ってる」


告白を拒んだのも、その先を恐れたからだ。
今の関係が幸せだからそれでいいって思ってるのかもしれない。

友情が恋情に変わった瞬間に、何もかも変わってしまうことがきっと嫌なんだ。


「...そんなことないって知って欲しいのにね」


何も出来ない自分自身を、酷く恨んだ。

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